〈yoongi〉WHITE… (ページ46)

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事務所のアイドルグループ計画が消えただの消えないだのと噂が飛び交う頃、一人の女の子が事務所の門を叩いた。

可愛いと誰もが口に出す程の美少女だった。

――あの子はセンターね
――踊らせても華がある
――声も透き通っている

みんながそう言って彼女を褒める。

私はそんな彼女を何か遠い存在のように感じていて、妬みも羨みもなく、ただただ呆然とその光のような女の子を見ていた。

｢Aさんは曲を作るんですね｣

｢うん｣

｢聴かせて｣

鈴を転がすような声で請われて、私は初めて社長以外の人間に自分の曲を聴かせた。

その時の自信作。マスタリングを済ませたら社長に聴かせようと考えていたポップなラブソングだった。

曲を聴いた彼女はその時なんと言ったのか、私は今になって思い出せないでいる。

確か綺麗とか可愛いとか良いとかそういう代わり映えのない褒め言葉を一つ私に投げかけたような気がするのだけれど。

そんな言葉は今となってはどうでもいい。

ただ、曲を聴かせた週の末か次の週に事務所の候補生が全員練習室に呼ばれて、グループの結成を告げられたことを覚えている。

もちろんその中に私の名前は無くて、絶望の中で家に帰って泣いた。その日に事務所を辞めようと思った。

誰も私を止めることはなかった。

むしろ候補生の中では年上で、今回のグループ選抜に選ばれなかったということは今後も望みはないということで、それが即ちここに私の居場所がないのだということは肌で分かっていたからだ。

その月の末に置きっぱなしだった私物を事務所に取りに行き、礼儀として会社の人間に挨拶に行こうと練習室のドアに手をかける。

ドアの隙間から光が零れる。

鼓膜を震わせた音を聴く。

｢あれ？｣

聞き覚えのある音は、私の作っていた秘密の音源で――思わず扉を開けたまま立ち尽くした。