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｢あーお前の淹れるコーヒーが飲みたい｣
｢豆送る？｣
｢……そういうんじゃない｣
真夜中はどうにも人恋しくさせるようだ。
酷く遠回りな甘い言葉に私は幸せな気分になる。
｢私はユンギさんの作るパスタが食べたいけどなあ｣
照れ隠しに冗談めかして、ユンギさん流の会いたいを伝えてみると電話の向こう側のユンギさんは鼻で笑った。
｢俺の真似？｣
｢そういう意味ですよね？｣
｢……まあそうだけど｣
会いたいとか好きとか、わざと言わないようにしている。
多分そういう欲を出したらあっという間に全てが終わりそうだからだ。
曖昧にしておかないと不安になりそうだった。
きっとお互いにそう感じているのか、柔らかい薄い膜を一枚張って踏み込んだり踏み込まなかったりをしている。まるでシーソーゲームのようだ。
そうして、これ以上欲張らないための確認をしているのは自分の為なのかユンギさんの為なのかはわからない。
多分、自分の為でもあってユンギさんの為でもあるのだろう。
｢おやすみA｣
｢おやすみ、ユンギさん｣
｢……切れよ｣
｢ユンギさんの方から切って｣
｢……｣
｢……ふふっ｣
｢やっぱまだ寝れねえわ｣
｢私も｣
｢映画でも観るか、一緒に？｣
｢どうやって？｣
｢同時に再生すれば観れるだろ｣
｢じゃあ観よ。この間言ってたパルプ・フィクションにする？｣
｢もっとムードのあるチョイスはないのかよ……別にいいけど｣
｢ユンギさんもこの監督好きでしょ？｣
｢……好きだよ｣
やけに熱っぽい声音で言うそれはきっと、私の勘違いではない。
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作者名：sai
| 作者ホームページ：https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時：2019年4月26日 2時
