〈yoongi〉WHITE… (ページ35)

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突然ガタン、と音がした。ような気がした。

ユンギさんの口が薄く開くのをスローモーションのように眺めていたら、私の顔に影がさす。

ユンギさんはすっと表情を冷たいものにしたので、つられて視線の先を振り返ると見知った顔があった。

カフェに来るあの男が私の後ろに立ち尽くしていた。

何故ここに居るのかという疑問があったが、緊張した雰囲気が私の思考を完全に停止させている。

｢そういうことか｣

獰猛な目をした男が私見て笑いながら吐き捨てるように言った。

｢誰だよ｣と険しい顔をしたユンギさんが私を庇うように肩を引いて後ろに立たせる。

店内がしんと静まり返り、剣呑ではない雰囲気が満ちていた。

｢俺を騙したな｣と男が言った。その表情が狂気を孕んでいて、私はびくりと肩を揺らす。

でもここにはユンギさんがいる。

そう思うとなんだか怒りが込み上げてきて、私は思わずユンギさんの前に出て、男と相対した。

｢私は、騙してない。確かに、はっきりと断らなかった私が悪いけど……でも、今は貴方とは関係ない｣

そう告げると、男の顔にさっと赤みが差した。恥をかかせているという現実に思わず身構える。

バーカウンターの向こうではマスターが今にもこちらに口を出そうと構えているのが分かった。

最悪の空気を感じて私が拳を握りしめると、その手が暖かいものに包まれる。

驚いて後ろを振り返ると、ユンギさんが｢出よう｣と言った。

怒っているような表情だったけど、声は私を慰めるような優しいもので。

ユンギさんはカウンターに紙幣をそっと置くと、私の手を引いてゆっくりと店の外へと連れ出した。

最悪だ。と思った。ユンギさんは固い表情のままだった。

せっかく誘ってくれたのにとか、なんであの人がここに居るのかとか、こんな表情をさせたくなかったとか、色んな気持ちが渦巻いてぐるぐるとしている。

｢ごめんなさい｣と謝ると、ユンギさんは握ったままの手に力を込めた。

｢謝るなよ｣
｢でも……｣
｢お前のせいじゃない。大丈夫だから｣

ユンギさんはそう私に言うと柔らかい表情を見せた。