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オシャレをした。
久しぶりに髪をアップになんかして、お気に入りのピアスと新しいリップを塗り、お気に入りのシックなワンピースを着る。
夜のバーに行くから少し大人っぽさを意識したメイクは粒の綺麗なラメをのせた。
私はすっかり浮かれていた。
降りたことの無い地下鉄の駅を降り、見知らぬ路地裏を歩く。
夜のソウルは華やかでどこか危うげな雰囲気もあった。
ユンギさんに指定されたバーはひっそりとした雑居ビルの中にあった。隠れ家的という言葉がピッタリのそこは、知る人ぞ知る店なんだろうと思う。
深い青地に金色のアンティークであろうドアを開けると、薄暗い照明が落ち着いた雰囲気を醸し出すバーカウンターが見えた。
そして、カウンターのやや奥に静かにグラスを傾けるユンギさんの横顔が見える。
｢いらっしゃいませ｣
カウンターに近づくと中年の小綺麗なマスターが笑顔でウイスキーを注ぎ、向かいに居たユンギさんが私の顔を捉えた。
｢久しぶり｣
ユンギさんは穏やかに笑った。髪の色がすっかり別人のように変わっている。
｢お久しぶりです｣
促されて隣に座る。照明の真下の席に着くと、コースターが置かれた。
飲み物を聞かれて、とりあえずダイキリを頼む。ユンギさんはどうやら赤ワインにしたようだ。
｢ワイン好きなんですね、いつも飲んでる｣
ニコッと笑ったタイミングでダイキリがそっと置かれる。口をつけるとラムとライムの華やかな香りが鼻をついた。
｢ユンギさんは相変わらず忙しいですか？｣
｢これからは作業中心｣
｢アルバムですか？｣
｢まあ、それもだけど色々｣
相変わらず忙しそうなのに、ユンギさんの表情はとても明るい。
きっと作曲がとても好きなのだろう。
最近暗い顔をしてばかりの兄のことを思い出した。
きっと天才とそうではない者の差があるとしたら、こういうところに違いない。
｢今日は急に呼び出して悪かったな｣
｢いえ……｣
呼び出し自体はとても嬉しかった。
だけど、私の中ではどうしてという部分に疑問が多く、少し言い淀むような形になる。
ユンギさんは静かにグラスを傾ける。
うっすらと顔が赤らんでいた。いつからこうして飲んでいるのだろうか。
芸能人である以上、一緒に入店したらスキャンダルの的になるかもしれないという配慮は分かっているけれど。
｢なんとなく、会いたくなった｣
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作者名：sai
| 作者ホームページ：https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時：2019年4月26日 2時
