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――コンサート当日。
会場までの道も人がいっぱいで、会場に着いたら人混みは巨大な人の群れになっていた。
様々な言語が飛び交い、華やいだ空気はユンギさん達七人の歌を聴けることを待ち遠しく感じる熱を孕んでいる。
兄と私はペンライトを買い、うろうろと入口を探し、席につく。
三階席の奥の奥。
殆ど末席と言ってもいいそこに腰をかけると会場を見下ろす。
何千何万という人々がステージを向き、膨張した声が折り重なって独特の雰囲気を醸し出す。
｢スゲーな｣
兄がぽつりと零す。
私はその言葉に頷いた。
私からは遠い遠いステージにユンギさんは立つのだ。
｢ペンライトってどう使う？｣
｢スイッチここでしょ｣
｢うわ、点滅した。どう消すんだこれ｣
｢こうじゃない？｣
なんていう気の抜けた会話をしながら暫く経つと、会場にはいつの間にか人が犇めき合い、開演間近の緊張した空気で張り詰めていた。
フッと照明が落ちる。
ざわめく会場。
視線が一気にステージへと向けられる。
｢おお、開演かー｣という兄の間延びした声に、私はもう頷くことすらしなかった。
始まった公演は一言で言うとエネルギーの塊だった。
後ろから見る会場は光の波を生んで、曲に合わせてゆらゆらと蠢く。
一糸乱れぬ掛け声と地響きのような歓声。
その中でユンギさんは歌を歌って、踊って、時折メンバーと笑い合っていた。
まるで自分の存在証明をしているかのような力強いラップと幻想的な風景。
圧倒された。
きっとこの為にユンギさんは生きているのだろうと、なんとなくそう感じた。
音楽に祝福された人だとも感じた。
――青い炎だ。
ふと、そんなことが過ぎる。
静かに揺らめく青い炎。
冷たくて熱くて美しい光。
暗い闇と伸びる影。
無音の世界で燃えているような、そんな感じ。
頭の中のキャンバスが一気に色づくような気がした。
振り返ってみると一瞬のような公演は何度目かのアンコールと大歓声と共に終了した。
｢いやーやばかったな｣と感心しきりに感想を述べる兄とは対象的に私は終始黙ったきりだった。
今ならあの真っ白なキャンバスに色を乗せられる。
その気持ちが焦りとなって、今すぐキャンバスの前に飛んで帰りたかった。
｢腹減ったなー飯どうする？｣
｢私は帰る｣
｢マジかよ。俺サムギョプサル食べたいんだけど｣
｢私、一人で帰る！｣
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作者名：sai
| 作者ホームページ：https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時：2019年4月26日 2時
