〈yoongi〉WHITE… (ページ24)

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それからの日々は私だけを取り残したように流れて行った。

どんどん仕事の依頼が入る兄とハンソル兄さんは作業室に籠る時間は増えて、会話をすることも少なくなっていた。

ユンギさんはツアーで世界各地を飛び回り、芸能ニュースのヘッドラインには常にBTSの文字が踊る。

対する私は毎日昼か夜にカフェのバイトに入り、時折知り合いのピアススタジオのお手伝いをしたり、作曲したり、しなかったり、絵を描いたり、描かなかったり……。

時々、惨めになるのは何故なのだろうか。

テレビの画面には私の曲を盗んだ友達が新人アイドルとして歌番組に出ている。

私はそれを静かな部屋で見ながらデリバリーの中華を食べるのだ。

｢太ってきた｣

うっすらと肉の乗りはじめた腹を摘んで複雑な気持ちになる。

ダイエットだるいなあなんて考えながら、とりあえずストレッチをする。

イヤホンから流れるのはユンギさんの歌声。

シャッフル再生にしているプレイリストがふとユンギさんのミックステープを流し始めた時、折りたたんでいた体から力が抜けた。

――やりたいことがないなんて馬鹿みたいだけど……

遠くへという意味で付けられたタイトルが痛い。

まるで自分のことを歌っているような歌詞に僅かに呼吸が止まる。

それは"私と同じような気持ちを持ってる"という安堵でも"私と似ている"という同情でもなく"ユンギさんはこの虚無感を作品に落とし込める"という途方も無さに対しての落胆だった。

私の中で過去はまだ誰にも慰められない記憶で、上手く言葉にも涙にも変えられない傷として残っている。

でも、ユンギさんはこれを曲に出来るのだ。

今まではユンギさんのことを芸能人だとか成功した作曲家だとか、そういう枠組みの中で遠い人だと思っていたが、今回のこれは決定的な遠さだった。

私にはまだ過去を絵にも曲にも出来そうにない。

来月には貸しアトリエで知り合いの展示会に作品を出す。

知り合いの個人サイトに流す曲の依頼もあるし、クラブDJの友達と作る曲もバンドに提供する楽曲もある。

色んな作品を作らなければならないのに、今の私には何もないような気がした。

自分には夢も何もかもがないような気がして、途方に暮れた。

私はとても薄っぺらくて、白い。