〈yoongi〉WHITE… (ページ2)

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コーヒーを持って部屋に入ると、乱雑に散らかった室内が目に入る。

｢おー妹よ｣

そう声を上げたのはヘッドホンを首に掛けパソコンの前にだらしなく座る兄と、兄が小学生の頃から一緒に音楽を作っている兄の親友であるハンソル兄さん。

二人がここでこうして音楽を作っているのは私にとって幼い頃からの日常だった。

私はゆらゆらと揺れるコーヒーの水面に気をつけながらマグカップを兄に手渡すと、兄は受け取るやいなやコーヒーを啜り、そして画面を指さした。

｢お前も聞いてってくれよこれ｣
｢完成したの？｣
｢いや、あれは保留。今日はユンギと別のヤツ作ってんだけどさ｣

ユンギ。そう言われて私はちらりと横を見る。

ハンソル兄さんにコーヒーを手渡したその人は私の視線につられるかのようにこちらを見た。

私は何故かちょっとだけドキリとした。

｢今初めて名前聞いたかも｣
｢会うの初めてだっけ？｣
｢うん……｣

そう兄の言葉に答えると、隣に居たユンギさんはハンソル兄さんの座るソファの隣に腰掛けながら｢ミンユンギです｣とだけ答えた。

｢何度かうちに来てたの？｣
｢あーお前バイトしてる時だったかもしんねえ｣
｢ふーん｣

兄はよく友達や仕事仲間を部屋に連れてくるので何も今更特別驚くことではなかった。

｢今回の楽曲提供？｣
｢いや、今日のは遊びみたいなもん｣

カラカラと笑いながら兄はもう一口コーヒーを啜ると、画面に向き直る。

｢いやーユンギの曲めっちゃいいんだよ｣

そう言ってマウスをクリックすると、部屋の空気が一瞬で変わった。

ユンギさんの怖そうな見た目とは裏腹に流れるようなピアノの音が空気に溶け落ち、余韻もそのままに弾けるようなパーカッションの音が重なって部屋中に満ちる。

キャッチーなサウンドと哀愁のあるエフェクト。

そして曲の終わりを告げる切ないディストーション。

ぐっと惹き付けられるような音楽がそこにある。

私は目を見開いた。

｢綺麗｣

この音に声が乗ったらどんなものになるんだろう。

私がすぐに考えたのはそんなことだった。

｢めっちゃいい！｣
｢だろ？｣
｢ユンギさんって何者？｣

興奮しきりに私がそう問うと、ソファに座ったユンギさんは薄らと口の端に薄っぺらな笑みを貼り付けて言った。

｢一応ラッパー。アイドルの｣