乗り越しラブストーリー ２ 【赤】

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「…望くん、？」





望くんの家に入り、私はソファに座って望くんはキッチンで何やら漁ってる


というより、ペットボトルに入った水を片手にずっと何かを考える


この無言の時間が何分続いたかは分からない、でも、この空間が息苦しくてつい私から話しかける





「…ん？…あぁ、ごめん…考え事しとった」





私が相当心配そうな顔をしていたのか、ハッと現実に戻ってきたように目をぱちくりさせて、


苦笑いをしながら私の隣に座る





「…Aさ、ほんまに俺でええの？」


「何が？…どういう事？」


「しげの事……まだ好きなんやろ？」





望くんはなんでそんなに悲しい顔をして私に笑いかけるんだろう


大毅くんのことはもちろん好き


きっと過去の過ちさえなければ、私は大毅くんから離れることもなかったし、望くんと出会うこともなかった


大毅くんから離れてから、私のことを支えてくれていたのは紛れもない望くんで、


それなのに…5年も空白の時間が存在するのに、どうして大毅くんのことが頭から離れないんだろ





「望くん…………、お願い、…私を望くんで染めてっ、」





忘れられないなら、新たに染めてしまえばきっと、その記憶は消えて無くなるハズだから





隣に座る望くんに抱き着く形で私から上に覆いかぶさる


なんでそんなに悲しい顔をするの？


……そりゃそうか、この前私は彼をを拒否したばかりだ





「っちょ、A…」


「お願いっ、…望くん、お願い…」





無理矢理とも取れるほど強引に私は望くんにキスをした


最初は止めようと慰めていたけど、だんだんと深くなる口付けに積極的になる望くん


息を吸うため一度離れようとするけど、その行為は望くんが私の後頭部に回した手によって遮られ


私の力が抜けると景色は180度変わって、天井と、肩で息をする望くんの顔


目にかかる前髪で表情が見えなくて、それを私は両手で掬い上げ耳にかけてあげる





「……ほんまに俺でええんやな？」





ようやく見えたその表情は、綺麗で美しくて、悲しくて切なかった


コクリと私が頷くと、もう一度降りかかる口付け


それは、先ほどのように激しいものではなく、優しく、私の存在を確かめるかのように


一つ一つを丁寧に落としていった





.





新しく染まれば忘れられると思ってた


でもそれは大きな間違いで、行為の途中で急に怖くなって涙が止まらなかった


そんな私でも望くんは優しく抱き締めて、背中を摩ってくれた

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