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減っていた残業が少しずつ増え、終電で帰宅、始発で出勤というような状況が続いていた。お昼休憩をとる暇も無く、慌ただしく過ぎていく日々に段々と心が擦り切れていく。彼らのいる神社に寄る気力もなく、気づけば最後に会ってから1ヶ月の月日が経とうとしていた。
『(明日も始発…眠いしつかれた、)』
少しでも気を抜けばそのまま倒れてしまいそうになる体にむち打ち、暗い帰り道を歩く。
「…やっと会えた、」
近くで聞こえた声にハッとして振り返ると、そこには久しぶりに見るだるまさんの姿があった。困ったような顔をしてわたしに近づく彼は、少しかさついた指先でわたしの目元をなぞる。
「隈えぐすぎん?」
『…だるまさんだ、』
「ん。だるまさんやで。よぉ頑張ったな」
ぽんぽん、と頭を撫でられて気が緩んだのか体がぐらりと揺れた。慌ててわたしを支えるだるまさんの腕のなかで、今まで抱えていた気持ちがこぼれ落ちる。
『…つかれた、』
「ん。お疲れ様」
『いっぱいがんばってるのに、わたしはデキソコナイだから…ダメだって…、』
「Aはよぉ頑張ってるで。」
『…なにもしらないくせに、勝手なこと言わないでよ』
そう言ったわたしの頭上で大きなため息を吐いただるまさんは、少しの無言の後呟くように言った。
「昨日は後輩の尻拭いで別の会社の人らに頭下げて、一昨日は急に振られた仕事で残業。その前は〜…」
『…なんで、』
「ずっと見守っとったからな。
…ほんまに、よく頑張ったな」
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yura(プロフ) - くくくさん» 最後までお読み頂きありがとうございました…!別作品も楽しんで頂けましたら幸いです! (3月4日 21時) (レス) id: 5f689998c0 (このIDを非表示/違反報告)
くくく - 泣いちゃいました…次回作楽しみにしてます (2月29日 15時) (レス) id: 9c08b4fe18 (このIDを非表示/違反報告)
yura(プロフ) - をわさん» 最後までお付き合い頂きありがとうございました!次回作もよろしくお願いいたします…! (10月6日 14時) (レス) id: 5f689998c0 (このIDを非表示/違反報告)
をわ(プロフ) - お疲れ様でした!!リアルタイムでこの作品を追いかけることができて幸せでした!次作も楽しみにしております…!! (10月5日 1時) (レス) @page50 id: ab4027dd5b (このIDを非表示/違反報告)
yura(プロフ) - をわさん» そう言っていただけて嬉しいです…!完結までお付き合い頂けると嬉しいです◎ (8月23日 22時) (レス) id: 5f689998c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:yura | 作成日時:2023年6月4日 13時