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日の沈んだ神社に、夜の冷えた風が吹き込む。
夕飯とお風呂を済ませ、寝支度を整えているとなるせさんがぴったりとくっつくように座ってきた。
「もう眠い?」
『ん?まだ眠くないよ』
「ちょっと散歩しない?っていっても神社の敷地ぐるぐるまわるだけだけど」
そう言われて拝殿を出て、ゆっくりとしたペースで敷地内を歩く。わたしの隣を歩くなるせさんはお風呂上がりだからか軽装で、いつもの可愛らしい雰囲気とは違いどこか少年のような雰囲気を醸し出していた。
「なぁに、あんまり見ると穴開いちゃうんだけど」
『いつも可愛いお着物着てるなるせさん見てたから、なんか新鮮で…』
「…もしかして惚れちゃった?」
ニヤニヤとした顔でわたしを見つめるなるせさんのおでこにぴしっと軽くデコピンをすると、痛ぁい!と大袈裟なリアクションを取りおでこを両手で抑えていた。
『変なこと言うからだよ』
「えーん!いたぁい!暴力はんた〜い!」
『はいはい、ごめんね?』
「これは罰として一緒に寝てもらわないと気が済まないな…」
『うんうん、わかったわかった』
「なぁんか雑じゃね?もしかしてなるせのこと嫌い?」
『まさか、』
大好きですよ、と言うと同時に私の手をぎゅっと握ったなるせさんは、スキップでもしそうなくらい上機嫌に歩いていく。嬉しそうな彼の横顔が月明かりに照らされて、どこか幻想的に見えた。
そのまま歩いていくと、鳥居の近くでぴたりと立ち止まりわたしの方を振り返る。鳥居の外は夜だからか何も見えず、闇に包まれている。
「Aはさ、俺らと出会えてよかった?」
『もちろん。今まではただ働いて、家に帰っての繰り返しで…何のために働いてるんだろって悩むこともあったけど、なるせさんたちと出会って、仲良くなって…肩の力の抜き方がわかった、っていうのかな…』
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yura(プロフ) - くくくさん» 最後までお読み頂きありがとうございました…!別作品も楽しんで頂けましたら幸いです! (3月4日 21時) (レス) id: 5f689998c0 (このIDを非表示/違反報告)
くくく - 泣いちゃいました…次回作楽しみにしてます (2月29日 15時) (レス) id: 9c08b4fe18 (このIDを非表示/違反報告)
yura(プロフ) - をわさん» 最後までお付き合い頂きありがとうございました!次回作もよろしくお願いいたします…! (10月6日 14時) (レス) id: 5f689998c0 (このIDを非表示/違反報告)
をわ(プロフ) - お疲れ様でした!!リアルタイムでこの作品を追いかけることができて幸せでした!次作も楽しみにしております…!! (10月5日 1時) (レス) @page50 id: ab4027dd5b (このIDを非表示/違反報告)
yura(プロフ) - をわさん» そう言っていただけて嬉しいです…!完結までお付き合い頂けると嬉しいです◎ (8月23日 22時) (レス) id: 5f689998c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:yura | 作成日時:2023年6月4日 13時