03 ページ3
.
.
そう言って案内された本殿の中は、思っていたよりもずっと広かった。
彼の後ろをついて行くように長い廊下を歩いていると、ひとつの部屋の前で立ち止まる。
「ありさかぁ、なるせぇ、お客さん〜」
開かれた襖の中には、橙色の着物を着た茶髪の男性と、布団に横たわる桃色の髪の女性がいた。
こちらを振り返った茶髪の彼の視線は、わたしと隣に立つ銀髪の男性を行ったり来たり。
「…どちらさんですか?」
『えっと…参拝に来ました…?』
「参拝…?こんなボロい神社に…?」
「まぁまぁそんな細かいことはどうでもええやんありちゃん!なるせ〜体調どうや〜?」
「…今お前の大声で頭痛くなった」
「冗談言えるくらいには回復しとるみたいやな」
私そっちのけで続く会話にどこか居心地悪くなり、意味もなく手に持ったビニール袋の持ち手をもてあそぶ。しばらくすると布団に横たわっていた彼女が布団から起き上がり、のそのそとわたしに近づいてくる。
「ねぇ」
『は、はい…?』
「それ、なに?」
それ、と指さされたのは持ち手がくしゃくしゃになったビニール袋。中身が見えるように袋を広げると、彼女の表情がぱっと明るくなった。
「え、プリンじゃ〜ん!」
『プリンご存知なんですか…?てか、男…?』
「プリンくらい知ってる。あと男。」
『そう、だったんですか…すみません、失礼なこと言いました』
「ん〜?別に。俺可愛いから仕方ない」
軽快に続く会話中も、彼の視線は袋の中のプリンから離れない。まるで子供がおねだりするような表情に小さく笑って、プリンとスプーンを手渡した。
.
.
650人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yura(プロフ) - くくくさん» 最後までお読み頂きありがとうございました…!別作品も楽しんで頂けましたら幸いです! (3月4日 21時) (レス) id: 5f689998c0 (このIDを非表示/違反報告)
くくく - 泣いちゃいました…次回作楽しみにしてます (2月29日 15時) (レス) id: 9c08b4fe18 (このIDを非表示/違反報告)
yura(プロフ) - をわさん» 最後までお付き合い頂きありがとうございました!次回作もよろしくお願いいたします…! (10月6日 14時) (レス) id: 5f689998c0 (このIDを非表示/違反報告)
をわ(プロフ) - お疲れ様でした!!リアルタイムでこの作品を追いかけることができて幸せでした!次作も楽しみにしております…!! (10月5日 1時) (レス) @page50 id: ab4027dd5b (このIDを非表示/違反報告)
yura(プロフ) - をわさん» そう言っていただけて嬉しいです…!完結までお付き合い頂けると嬉しいです◎ (8月23日 22時) (レス) id: 5f689998c0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:yura | 作成日時:2023年6月4日 13時