夢幻

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『まじでこんな会社辞めてやる…』



最後に定時退社をしたのはいつだったか。
街灯もまばらな夜の街を、重たい体を引きずるようにしてとぼとぼと歩く。


明日は貴重な休日。たまには、とコンビニで買ったお酒やおつまみ、頑張った自分へのご褒美のスイーツが入った袋をゆらゆらと揺らしながら通い慣れた帰り道を歩いていると、住宅の外れに視界に見慣れないものが映った。







(…………こんなところに神社なんてあったっけ？)







大きな鳥居は少し薄汚れているように見え、夜中ということも相まってどこか不気味だ。
数段の階段を上がった先に見える拝殿の軒下には、複数の提灯が灯っており、風も吹いていないのにゆらりと揺れていた。


頭の中ではここに近づいては行けないと警告が出ているのに、体は勝手に神社に近づこうと歩みを進めている。


『う、わぁ…』


鳥居をくぐった先にあるのは、2体の狛犬と小さな拝殿。
ぼんやりと灯っていた提灯は近くで見ると煌々と輝いており、怪しい雰囲気を醸し出している。


しばらく呆然とその場に立ち尽くしていたが、折角来たのだからと拝殿に設置されている賽銭箱に近づいた。
お財布の中にあった五円玉を賽銭箱に入れ、ガラガラと鈴を鳴らし手を合わせる。今の私の願いはたったひとつ。





(弊社が爆発しますように…！)








「あっはは、そんな物騒なお願い事する人初めて見たわ」



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