HAPPY ENDING 3

3 ページ3

.



日本に着いた

警戒していたペンも
気が抜けるほど誰もいなくて

空港に行くたびに
溢れる人波に押されていた頃と比べると

少し寂しいような気もした



『今日はどこに行くの？』

「ちょっとうちの事務所のグループの
　撮影があってね

　私が同行することになったんだ」

『そうなんだ…』


前の生活を思い出すようなことは
あまりしたくない

少し暗い顔をしてしまっただろうか

父さんは少し申し訳なさそうな顔をした



「ごめんな、嫌だったよな
　でもどうしても今回だけは
　私が立ち会わないといけなくて…

　それが終わったら一緒に観光でも行こう」

そう謝るように言う父さんをみて

『わかった』


そう言うしかなかった

父さんがわたしのためにならないことを
するような人ではないとわかっていたから






.




父さんについて入った現場には
ステージが用意されていて

今から歌でも歌って踊るのだろう

うちの事務所はそういう事務所だから
当たり前のことだけど


なにか新しいグループでも
日本デビューするのかな？


何の情報も持っていないわたしには
何もわからなかった

社長である父さんに気付いて挨拶に来る
顔見知りの事務所のスタッフに

自分だとわからないように
少し遠巻きに立って帽子を深く被った




1年間で伸びた髪のおかげもあって
こうしていればほとんどバレないだろう






.




しばらくしたら収録が始まった


僕は社長に呼ばれ
2人で並んでその収録を眺めた



.

4→←2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す