配信の裏側に君との内緒事 (ページ32)

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淡雪の内緒事③① ページ32

急に改まって謝り出すから何のことかと思えば、前回の会った時の距離感のことであった

改めて言われると昨日のことのように鮮明に思い出されて本人以上にダメージを貰ってしまった

Aが言い出したことでこんなんなってるのに当の本人はもう笑っており、大変心外である

ただ“誰にでもするわけじゃない”というワードを聞いてもう機嫌が治ってしまう俺はやはり単純なのだろう
しかし素直に単純だと認めるのも癪なので、“他のやつにやるなよ”と、少し我を出してみる

あんだけ笑われたんだ、こんぐらいバチ当たらんだろ

実際Aもその意味に気がつきもしていないようで、今はもう楽しそうに昼食の準備をしてくれている

「今日のメニューはなんですか」

「今日はね〜オムライス！
昔好きだったよなーって」

「よう覚えてるね」

「だって私がオムレツでレイドくんがオムライスだから、お母さんが一石二鳥で助かる〜って良く言ってたしね」

「あー確かに洋食屋さんとかのオムライスにもオムレツ乗ってるわ」

Aの横に立ち会話をしている間もAは、フライパンを上下させ器用にオムレツの形を作っていく
ケチャップライスは昨日のうちに仕込んで冷凍して持ってきたらしい

「器用なもんだなぁ」

「ふふ〜うまいっしょ」

「天才」

「やった〜」

なんか、マジで会話のテンポとか感じがしっくりきすぎて同棲してるんじゃないかと錯覚してしまう

「流石にオムレツは出来立てが美味しいからね
なかったら困るからフライパン買ってきた！」

「お手数おかけします…」

「置いておけば次回私が楽だし初期投資よ」

次回があるようです…神か

「毎回不便かけるのも申し訳ないし
今度Aに調理用具見繕ってもらうかぁ」

「あっいいね！行こ行こ！」

図らずともお出かけの予定をゲットしてしまった
買い物といえばもっぱらネットな俺からすると、出かけて買い物をするというごく当たり前な選択肢が浮かばなくて棚からぼたもちである

当の本人は“調理器具見るの好きなんだよね〜”なんて呑気なもので
こっちは大事にしなくてはいけない一線を越えるか超えないかを必死に反復横跳びしているというのに

「どうしたもんかねえ」

「え〜？何が？」

「なんでもない、うまそ〜〜！」

見てわかるぐらいにふんわりと出来上がったオムレツみたいに、ふわふわしているこの子

先が長いなぁと心の中でため息をつくのであった

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