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トントントン、
 




リズム良く聞こえてくるまな板の音はAによって生み出された。
 




『こんな感じ?』
 


「そーそー、良いじゃん」
 
 




そう褒めると彼女は照れ臭そうに笑った。
俺たちが台所で肩を並べているのは買い物の途中の彼女の言葉がきっかけだった。
 
 





『私も料理したい』
 





元々”A”は料理が上手で時折一緒に飯を作ったりもした。
だからそんな申し出に二つ返事でOKし、今に至るのだが。
 
 



「ちょちょちょ… !」
 




此奴はカラクリであり、料理などした事もないど素人である。
包丁さばきは一度教えてしまえば一発でマスターしたが、他はそうも行かなかった。
 




「とりあえず、後は俺がやるわ…」
 




Aは包丁を置くと申し訳なさそうに一歩下がり様子を見ていた。
彼女の視線が少しやりずらくもあったが何も言わなかった。
 




「うし、まぁこんなもんか」
「A、これ皿に移してもらって良い?」
 




それくらいは任せようと判断した俺が馬鹿だった、いや、ちゃんと教えなかった俺が悪い。
ジュー、という音と共に湯気が上がるのは彼女の手のひらだった。
 




「は?! おま…! 何やってんだ?!」
 


『え?』
 




Aは熱々の鍋をそのまま素手で掴み皿へと移そうとしていたのだ。
あまりに衝撃の行動に俺は声を上げた。
その声に新八も神楽も様子を見に来る。
 





「どうしたんですか?!」
 





一先ず鍋を置かせ彼女の手を乱雑に掴んでは冷水を掛け流した。
 




「火傷するだろうが!!」

『…ごめんなさい、…でも』

「「でも」じゃねぇ!! “A”ならもっとそれらしくしろ!」
 




掴んだ腕は確かに人間のように柔らかいものだったのに、その手は火傷の跡など一切無い。
 




「銀さん…! 言い過ぎですよ!」
 


「そうアル!」
 




擁護しようとする二人をAは『大丈夫』と伝え俺の顔を覗き込んだ。
 




『ごめんなさい、そんな顔しないで』
 




俺は今どんな顔をしているのだろうか。
そんなの見なくても酷い顔をしているに違いない。
 


.
 


 
.
 



.
 




「…怒鳴って悪かった」
 




俺はと言えば夕食の準備は新八達に任せ、Aの手に包帯を巻いていた。
彼女は決してそれを拒まなかった。
包帯などカラクリの彼女にとっては意味のないものかもしれないが、それが”人間”なら当然なのだと理解しているのだろう。
 


Aは何度も『ごめんなさい』と謝っていた。
 



その日の飯は味が分からなかった。




---

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アカツキ(プロフ) - おひなさん» はじめまして、温かいコメント有難うございます。またご縁がありましたら読んでくださると嬉しいです (8月15日 7時) (レス) id: a7c4fa7239 (このIDを非表示/違反報告)
おひな(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました!😊 (8月14日 23時) (レス) @page38 id: fb3fd917e6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アカツキ | 作成日時:2023年7月24日 13時

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