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「チッ…」
一つ、舌打ちをした高杉は歩みを止め振り返る。
「下手な尾行はやめろ」
そう言われ姿を見せれば其奴は盛大に溜息を吐いた。
「…次に会ったらぶった斬るっつってたのは何処の何奴だかなァ?」
「高杉、お前がAを斬ったのか」
「……おいおい何か勘違いしちゃ居ねェか?」
ス、と切長の目が街頭に反射して異様な光を帯びている。
冷たい目だが、其奴のそんな目には慣れている。
高杉もそれは分かっているのか、次に口を開き発した言葉はやけにゆっくりで、まるで言い聞かせるかのようだった。
「彼奴は”A”じゃねぇ」
そんなこと、
「言われなくても分かってる」
分かっている事を改めて指摘され無性に腹が立ったが、何を言ったって仕方ない事も分かっている。
だからこの苛立ちは抑えて深呼吸する。
「俺はお前の為を思って言ってるんだがなァ?」
「お前がそんな事気にするタマかよ、高杉」
「ククッ…、手前ェが思ってるより俺はお優しいんだぜ?」
高杉は俺を見て笑ったがその目は相変わらず笑ってはいなかった。
「”A”は高杉に会ってたの?」
俺に質問にピタリと止まる。
それは肯定の意味だと思った。
「彼奴、何て?」
「…”A”が何でこんな事を計画したのか、よく考えるんだな」
「”A”が…計画した?」
聞いてない、そんな事、誰も…
俺はてっきり歌舞伎町の奴らが…そう思っていたんだ。
「そんな事にも気付けなかったのか、手前ェは」
軽蔑の含まれた言葉を吐き捨てる高杉は踵を返した。
「偽物に聞くんだな、どうせまだ壊れてねぇだろ」
それが分かっているなら、高杉はきっとわざととどめを刺さなかったのかもしれない。
結局、高杉もAを殺すことは出来なかったのだ。
俺は高杉が居なくなった後も暫くそこから動く事が出来なかった。
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アカツキ(プロフ) - おひなさん» はじめまして、温かいコメント有難うございます。またご縁がありましたら読んでくださると嬉しいです (8月15日 7時) (レス) id: a7c4fa7239 (このIDを非表示/違反報告)
おひな(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました!😊 (8月14日 23時) (レス) @page38 id: fb3fd917e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アカツキ | 作成日時:2023年7月24日 13時