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ブブ…、バチッ
変な音がしたが瞼は開かなかった。
ただ次に聞こえた『ぎんとき』という呼び声に重かった瞼もすっかり開いて、目を覚ます。
「!!」
『ぎん、とき』
握っていた手はいつの間にか体温を取り戻し、俺の手を強く握っている。
身体を動かす事はできないのか、俺を呼ぶ声だけが口から発せられていた。
「A…! A!」
心臓がバクバクと早く、煩い。
彼女の頭が肩に乗ったままだったのであまり動かず、顔を覗き込むような形で彼女の様子を見た。
『ただいま』
他に言う事があるだろうに、呑気に挨拶をするAに沸々と怒りが湧きあがった。
「ただいまじゃねぇだろうが! 何してたんだ?!」
違う、聞きたいのはそうじゃない。
「何してた」では無く、「何があった」だろうが。
『怒らないで、ごめんなさい』
Aの謝罪の言葉に何も言えなくなった。
ただ、ゆっくり体勢を変え、彼女を腕の中にすっぽり収めるように抱きしめた。
『……あったかい』
「そうかよ」
『このまま、もう少し』
まるで俺の心臓の音でも聞くみたいに、胸元に耳を当てる彼女に、俺は初めて「お帰り」と言った。
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アカツキ(プロフ) - おひなさん» はじめまして、温かいコメント有難うございます。またご縁がありましたら読んでくださると嬉しいです (8月15日 7時) (レス) id: a7c4fa7239 (このIDを非表示/違反報告)
おひな(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました!😊 (8月14日 23時) (レス) @page38 id: fb3fd917e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アカツキ | 作成日時:2023年7月24日 13時