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夜風が肌に当たり心地良い。
未だ、足元がふわふわする中、微かに花のような甘い香りがした。
嗚呼、Aの香りだ。
『銀時ー、大丈夫? 気持ち悪くない?』
「ぅーーーん…」
『もう少しだから、頑張って』
俺はと言えば彼女に支えられているお陰か、なんて事は無いが、少し息の上がってるAを横目に口元が緩んだ。
何だかんだ優しいよなぁ、って愛おしくなって、まだ着かなくても良いなんて思ったりもして。
そんな思いも虚しく、カン、カン、と。
一歩ずつ万事屋へ続く階段を二人でゆっくり登った。
『とうちゃーく、ハァ…、疲れた…』
『ほら、銀時、布団までは自分で』
俺はAの服をギュッと掴んで離さなかった。
まるで子供みたいに、まだ離れたくないとでも言うみたいに。
普段なら恥ずかしくて出来ない行為も、今日は、そして今だけは、全て酒のせいに出来るから良いのだ。
Aは何も言わずに寝室まで一緒に歩いてくれた。
「なぁ、A」
『ん、なぁに』
「此処に居て、何処にも行かねぇで」
『…貴方がそう望むなら、私はいつだって側に居るよ』
Aの腕の中で抱きしめられ”人間”と同じ体温と、”鼓動”にひたすら安心した。
本当に、生きてるみたいだ。
「はは…、嘘吐きだなぁ、手前ェは…」
眠気で霞む視界の中、俺は少し笑って目を閉じた。
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アカツキ(プロフ) - おひなさん» はじめまして、温かいコメント有難うございます。またご縁がありましたら読んでくださると嬉しいです (8月15日 7時) (レス) id: a7c4fa7239 (このIDを非表示/違反報告)
おひな(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました!😊 (8月14日 23時) (レス) @page38 id: fb3fd917e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アカツキ | 作成日時:2023年7月24日 13時