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キィィン…ッ!
金属同士がぶつかり合い、嫌な音が耳に刺さった。
高杉はAを相手にはせず土方のみを狙う。
「副長さんと、その右腕…二対一は分が悪いな」
「ハッ、余裕そうに受け止めやがって…よく言うぜ」
「今回は残念だったが、また来るぜ」
土方の刀を弾き飛ばすように押し切り、間合いを取った高杉は窓枠へと足を掛けた。
「またな、A」
ふ、と笑うと窓から飛び降りる高杉にAも土方も窓へ駆け寄り覗き込んだ。
甲板に着地した高杉は斬り掛かる隊士達を物ともせず薙ぎ倒しながら甲板横に止まる小型船に乗り込んだ。
「あの野郎…!」
高杉が乗り込むとその船は直ぐに離れて行き、どうすることも出来ない。
残った攘夷浪士は数名縄に掛けられ、後は斬り合いの末倒れている。
傷を負ったのは真選組側も同様だった。
「…チッ、おい、A、戻ったら説教だ。分かってるな」
「一人で勝手に行きやがって」
土方は刀を鞘に収めると、Aの頭を撫でた。
「無事で良かった」
その表情があまりにも優しくて胸の奥が痛くなるのを感じながらも、Aは『すいません』と短い謝罪の言葉しか発せなかった。
.
.
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「怪我人は手当を先に! 他の手の空いてる奴らは援助しろ」
負傷者も多く、手柄も上げることが出来なかった真選組全体の空気は重かった。
土方もまたその一人である。
「はぁー…」
煙草に火を付け吐き出した煙がゆらゆらと空への登って消えていく。
「お疲れ様です、副長」
「山崎、今回の始末書お前が書け」
「えぇ?! 何言ってんですか! 副長の仕事ですよ!!」
「どう書けってんだよ…」
眉間に皺を寄せ、手で押さえる土方の姿に山崎は苦笑いを浮かべるのみだった。
「でも今回はAさんのお手柄じゃないですか?」
「”高杉”が直々に顔を出すなんてそうそう無いですからね」
Aの話題に土方は顔をあげた。
そしてキョロキョロと辺りを見渡す。
そういえば彼女の姿を見ていない。
「…Aは何処行った?」
「え…? 俺は見てないですけど…、手当にでも行ったんですかね?」
ザワザワと嫌な感覚が駆け巡る。
土方の咥えた煙草の灰がポトリと地面に落ちた。
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アカツキ(プロフ) - めぐぽん(*´・∀・)さん» 最後まで読んでくださり有難うございました。めぐぽん様からのコメントとても励みになりました。 (7月2日 22時) (レス) id: d828e70b5b (このIDを非表示/違反報告)
めぐぽん(*´・∀・)(プロフ) - 完結、お疲れ様です!改めて、アカツキさんのお話が好きだと思いました。また楽しみにしてます! (7月2日 12時) (レス) id: baf8bee298 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - めぐぽん(*´・∀・)さん» 完結の目処は立っていますので更新はコンスタントに行えると思います。最後まで見守って下さると嬉しいです。コメント有難うございます (6月24日 14時) (レス) id: d828e70b5b (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - あさん» はじめまして。コメント有難うございます。かなり前に書き溜めてた作品を軽く手直ししながら載せているので至らない所もあるかもしれませんが、最後まで楽しんで頂ければ幸いです... (6月24日 14時) (レス) id: d828e70b5b (このIDを非表示/違反報告)
めぐぽん(*´・∀・)(プロフ) - 更新ありがとうございます!続きが楽しみです! (6月24日 12時) (レス) @page16 id: baf8bee298 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アカツキ | 作成日時:2023年6月21日 22時