おまけ ページ27
黄昏時、暗くなり始める空と共に冷たい空気が身体を貫く。
ヒュウ、と吹き付けるそれに男の咥えた煙草の煙はその場に漂う事無く消え、当の本人も軽く身を縮こませた。
市中見回り中消えたサボり魔の部下をさっさと見付け帰ろうとした所、1人の女を見付け声を掛けた。
「何してるんだ」
『見て分からない? 隠れんぼだよ』
「...もう暗くなる、さっさと帰りな」
『そうしたいのは山々なんだけど』
女は困った様子も無くそう言う。
『いつもね、あの人は私を見付けられないの』
「隠れるのが上手いんだな」
『私は探すのも得意だよ』
何とも不思議な雰囲気を纏った女だと思う。
見てくれは何処にでも居るただの女性ではあるのだが、何だろうか、この胸のざわつきは。
「とにかく夜は危ねェ、本物の鬼が出る前に今日はもう帰れ」
『貴方とか?』
「あ?」
『＿＿＿"鬼"は貴方でしょう? 副長さん』
ゾワッ、
ずっと感じてた気持ち悪さが鳥肌となり現れる。
確かに男は「"鬼の副長"」であり、江戸に居る者ならそれなりに認知度もあるだろう。
それにしても、だ。
『ふふ、貴方は探すのも下手そうね』
「......その言い方は他にあるみてぇだな」
『追い掛けるのも下手、すぐ逃げられちゃって』
「喧嘩売ってんのか?」
良い度胸だと言わんばかりに睨みを効かせて見たが女には一切通用しないらしい。
何とも無い様子で言葉を続けるのだ。
『そんなんじゃ、"私たち"は捕まえられないよ』
「なっ...?!」
何を言ってるんだ、と問い詰めようにも背後から聞こえる「土方さーん」という聞き慣れた声に阻止された。
振り返った先には仕事をサボっていたであろう部下の姿がある。
「何してるんでィ? 早く帰りやしょう」
そしてまた直ぐ女の方に向き直ったが彼女は既に居ない。
成程、隠れるのが得意と言うのは嘘ではないようだ。
「隠れん坊なんざ嫌いだ」
「何でィ、急に」
「隠れるのは性に合わねぇからな」
「なら鬼になれば良いじゃねぇですか」
日はすっかり沈みきり、暗闇に包み込まれている。
俺が"鬼"ならいつか、必ず見付けて捕まえてやろう。
---
殿堂入り記念のおまけでした
他のおまけ話もちょこちょこ書いていたので加筆修正してその内載せます
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 150人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ｱｶﾂｷ(プロフ) - 紅さん» コメント有難うございます。そんなに長くならずに完結すると思いますがもう少し付き合いくださいませ (2021年3月29日 18時) (
レス) id: 716f2c046c (このIDを非表示/違反報告)
紅(プロフ) - 応援してます！！更新待ってます！ (2021年3月29日 13時) (レス) id: b08ab2dbca (このIDを非表示/違反報告)
ｱｶﾂｷ(プロフ) - 東雲 晄さん» 東雲さん、お久しぶりです。前作に続きコメント有難うございます。高杉落ちは毎度暗い感じになりがちですが、雰囲気を楽しんでもらえればと思います...! 見守ってくださると嬉しいです (2021年3月25日 18時) (レス) id: 6533fa6fd3 (このIDを非表示/違反報告)
東雲 晄(プロフ) - お久しぶりです！前作から来ました！晋助夢ありがとうございます！続き楽しみにしてます！ (2021年3月25日 17時) (レス) id: 91bd77f472 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ｱｶﾂｷ
| 作成日時：2021年3月25日 0時
