8. ページ9
「おはようございまさァ」
『ふふ、「おそよう」だよ、沖田くん』
まだ眠気が残っているのか、沖田は「おそようございまさァ」と律儀に言い直す。
そんな彼にAは小さく笑い同じように『おそよう』と返した。
『今日見回りでしょ?』
『まずは顔を洗って準備しようね』
「あ〜だりィ......」
「姉御、一緒に団子でも食いに行きません?」
『うーん、凄く魅力的なお誘いなんだけど...』
『怒られちゃうよ』
"誰から"とは言わずとも、その人物をよく知っている沖田は心底嫌そうな顔をした。
「あの人は息抜きの仕方を知らねェんで」
『また誘ってね、次は休みの時に』
「へーい」
洗面所へと向かう彼を見送り、ふぅ、と息を吐き出す。
そんなAの後ろから今度は別の人物。
「あんまり彼奴を甘やかすんじゃねぇよ」
きっと沖田の誘いに乗っていたら怒鳴り声を上げていたであろう人。
Aは振り返る。
『甘やかしてなんて居ないよ』
「俺が居るってのに他の男とデートの約束たァ随分じゃねぇか」
『誰かさんが付き合ってくれないから』
「......んじゃ、行くか?」
『え?』
思ってもみないセリフに気の抜けた声を出す。
2人の関係は外部には秘密であり、デートと言うデートなどしたことが無い。
それに不満を持ったことなど無いし今回のも売り言葉に買い言葉のつもりだったのだが、一体どうしたと言うのだろうか。
「俺は非番の土方」
「お前は買い物帰りの一般人」
「その2人がたまたま茶屋で遭遇なんて何一つも変な事ァねぇ」
土方にしては珍しくペラペラと言葉を並べた。
「15時、定食屋近くの茶屋だ」
「忘れんなよ」
それだけ言うと彼はその場を去って行った。
Aは暫く呆然と立ち尽くしたが全てを理解すると段々と顔に熱が集まるのを感じた。
『これは......』
本当にデートと言うやつなのではないか。
約束の時間までまだ数時間余裕があるのを確認すると、残りの仕事を終わらせるべく屯所内を早足で駆け回った。
---
935人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アカツキ(プロフ) - -sara-さん» 此方の作品も読んで下さり、そしてコメントまで有難うございます。夢主ちゃんは皆様のご想像の中で存在して欲しいので詳しく設定等は記載しないのですが、sara様の頭に夢主ちゃんが浮かんでくれて嬉しいです! お褒め頂き光栄です、有難うございます (2021年8月16日 8時) (レス) id: 2cb0f29e5d (このIDを非表示/違反報告)
-sara-(プロフ) - こちらにも、こんばんはm(*_ _)mどうやら、私はアカツキ様の土方さんが大好きな様です(笑)元々好きではありましたが、素敵すぎます!あと、ヒロインちゃんも凄く好きです!なんか、映像として頭に浮かんできちゃいます。最後の「猛獣使い」が個人的に大好きです! (2021年8月16日 3時) (レス) id: 7c2d2afbf6 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - あめちゃんさん» コメント有難うございます、無事完結する事が出来てホッとしています。久々に土方落ちを書いた気がしますが、なかなかに楽しかったのでまたいつか出したいですね。応援有難うございました (2021年2月16日 16時) (レス) id: adf8f89573 (このIDを非表示/違反報告)
あめちゃん(プロフ) - アカツキさん» 完結おめでとうございます!!土方さんの良さがすっごいよく表現されていて、いつも読む手が止まりませんでした。私の作品も読んでいてくださりありがとうございます!こちらも頑張ります!改めて、完結おめでとうございます。 (2021年2月16日 15時) (レス) id: beda8b3808 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 東雲 晄さん» コメント有難うございます、途中文章ミスがあり申し訳ありませんでした... ご指摘有難うございました。またご縁がありましたら作品を読んで頂けると嬉しいです (2021年2月16日 7時) (レス) id: 3bd9d4536b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アカツキ | 作成日時:2021年1月25日 23時