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ああ、そういえば治くんも関西弁をぺらぺらと操っていたっけ。しばらく話していなかったというのも相まって、ふと意識の底に沈んでいたその現実が浮かんでくる。
ミスの候補者のかわいい女の子たちが方言を使って相手役のMCにエア告白していくのを見つめながら、ステージの上に立つ治くんを見た。
作ったような笑みを浮かべてステージに立っている彼は、私の目に何かフィルターがかかっていたとしても、抜きんでてかっこよくみえた。
──瞬間、私の周りが急にスローモーションになったような気がした。
ステージからは少し離れたところでぼんやりと立ち尽くす私を、治くんが見たのだ。気のせいかもしれない、と思ったけれど、小さく動いた唇は確かに「Aちゃん」と音のない言葉を紡いだように見えた。
スローモーションになったと思ったのも一瞬で、すぐに学祭のざわめきが私の耳を覆う。熱気に押しつぶされそうになりながら、私の視線はステージの上にくぎ付けになっていた。治くんが前に出たかと思うと、相手役のMCさんに向かって言い放つ。
「俺、お前のこと好きやねん、付き合うてくれんか」
観客席がわあわあと盛り上がる。マイクで拡張されたその低い声に、身の芯が竦む。治くんはああやって告白するのだろうかと思うと、息ができない。
嘘でも好きだと言ってもらえるMCの女の子が羨ましい。と同時に、嘘でもそれを見たくない。
私は踵を返して、ステージを背にした。遠ざかっていく観客の歓声すらも耳に刺さり、私の脳をぐらぐらと揺らす。治くんと仲直りなんてできるのだろうか。
私がカフェに戻ると、準備していたお菓子やらなにやらはすべて売り切れてしまっていた。
だからもうやることはなくなってしまって。“Close”の看板を表に出し、部員しかいない教室でぼんやりと窓の外を眺めた。
学祭二日目の夕方、最後に向けてにわかに燃え上がる若者の熱気をどこか遠くに感じている。部員も屋台を回りたいと何人か出て行ったのもあって、今ここにいる教室だけがやけに静かだった。
「……あ、ミスターミス決まったっぽいっすよ！」
後輩の誰かがそんな声を上げて、思わず座っていた腰を上げる。
この窓からはステージが見えないせいで、それがどうなったのかは分からないのだ。
「誰になったの？」
「ミスターが宮さんで、ミスが中野さん、らしいです」
ああ、やっぱり治くんはミスターを取ったんだ。
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雛(プロフ) - ネオンガールさん» ありがとうございます！よかったです！！！ (2018年12月24日 18時) (
レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - Blueさん» そう言っていただけるとこちらとしても非常に嬉しいです！最後までお付き合いいただきありがとうございました(；；)次回作も鋭意準備中ですので、楽しみにお待ちいただけたらと思います！ (2018年12月24日 18時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
ネオンガール(プロフ) - 雛さん» めっちゃキュンキュンしました！！笑 (2018年12月24日 12時) (レス) id: 18c4f82065 (このIDを非表示/違反報告)
Blue - この作品のおかげで治くんがめちゃくちゃ好きになりました。作品の完結おめでとうございます！お疲れ様でした！そして、書いて下さりありがとうございました！次回作も楽しみにしています！！ (2018年12月24日 1時) (レス) id: 82a4b13a9b (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - 彩兎さん» コメントと労いのお言葉たいへん嬉しいです。恋愛はもちろんですが、食について掘り下げたお話にしたかったので、少食に共感していただけるとこちらも書いた甲斐があるなと思います。こちらこそ最後までお付き合いいただきありがとうございました！ (2018年12月24日 0時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雛
| 作者ホームページ：https://twitter.com/pp__synd
作成日時：2018年11月4日 17時
