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「Aちゃん」
あ、とかう、とかいう言葉すら出てきてくれなくて、ただ瞬きを返す。
互いの呼吸が感じられそうなくらいの近さ。
このゴルゴンの呪縛が解ければ、すぐにでもくちびるが触れてしまえそうな、そんな。
ゆっくりと頬を伝い後頭部に回った手が私の髪を撫でていく。
髪の毛に神経なんか通っていないのに、触れられるだけでどきどきとうるさいくらいに脳髄を揺らす鼓動。
いたたまれなくて、でも動けないまま、渇いた喉奥から言葉を絞り出した。
「治、くん？」
私を捉えたままの彼の双眸が、揺れる。
時間さえも止まってしまったような感覚がした。
「……ごめん」
そんな低い声がして、するりと手が離れた。
すぐそばにあった彼の顔もゆっくりと離れて、指先から石化が解けていくような感覚がした。
急に私を取り囲む空気が質量を持ったように肺に流れ込んできたので、浅く息を吐いた。
さっきまでローテーブルを挟んでいたからか、離れたとはいえそれでも隣にいるから近い。
治くんの瞳を直視することはできなくて、彼の着ているＴシャツの襟もとをぼんやりと見た。
何が、「ごめん」なんだろう。
時間差で私がむせたこと？ それとも頬や髪に触れたこと？
酸素の足らない頭では正常な判断すらできない。だから、呪縛が解けたをいいことに、彼の手首を引く。
「何が「ごめん」なの、治くん」
「は、」
戸惑いを孕んだ彼の瞳が私を射抜く。また動けなくなりそうな気がしたけれど、気になってしょうがなくって。
脈無しだと思っていたのは違ったのかもしれない、なんて勝手な期待が頭をもたげて私の体を支配していくのだ。
「……なんでもええやろ、そんなん」
治くんは私から目を逸らして、小さく言った。いつもの低い声が、もっと低くなっていた。
「あ、」
治くんは男の子だから、私の手なんかいとも簡単に振り払えてしまう。
立ち上がった治くんは、私には一瞥も寄越さないまま部屋の隅に置いた荷物に手を掛けた。
「そろそろ帰るわ、あんまり長居すんのも迷惑やし」
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雛(プロフ) - ネオンガールさん» ありがとうございます！よかったです！！！ (2018年12月24日 18時) (
レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - Blueさん» そう言っていただけるとこちらとしても非常に嬉しいです！最後までお付き合いいただきありがとうございました(；；)次回作も鋭意準備中ですので、楽しみにお待ちいただけたらと思います！ (2018年12月24日 18時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
ネオンガール(プロフ) - 雛さん» めっちゃキュンキュンしました！！笑 (2018年12月24日 12時) (レス) id: 18c4f82065 (このIDを非表示/違反報告)
Blue - この作品のおかげで治くんがめちゃくちゃ好きになりました。作品の完結おめでとうございます！お疲れ様でした！そして、書いて下さりありがとうございました！次回作も楽しみにしています！！ (2018年12月24日 1時) (レス) id: 82a4b13a9b (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - 彩兎さん» コメントと労いのお言葉たいへん嬉しいです。恋愛はもちろんですが、食について掘り下げたお話にしたかったので、少食に共感していただけるとこちらも書いた甲斐があるなと思います。こちらこそ最後までお付き合いいただきありがとうございました！ (2018年12月24日 0時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雛
| 作者ホームページ：https://twitter.com/pp__synd
作成日時：2018年11月4日 17時
