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何も言えずに、私は首を横に振る。ツムさんは苦虫を噛み潰したような顔をして、言った。
「あいつ、「Aちゃん怒らしたかもしれん」ってこの前からずっと言うとんねん」
「え」
私を取り巻く空気が固まったような気がした。ツムさんの言葉の意味が咀嚼できなかった。
「……治くんを、怒らせて、嫌われたのは、わたしじゃ、」
混乱する私に彼は大きくため息をついて、まるで外国人みたいに大げさに肩をすくめて見せた。
「なんやそれ! おもろいけどおもんないわ!」
「どういうことよ」
「なんで俺が治のためにAちゃん追いかけたりせなあかんねん、俺の柄とちゃうわ」
「ええ、」
「俺はもう知らん! 治のために奔走するの癪やねん!」
ツムさんはいまだミスターコンの企画が行われているであろうステージをきつく睨みながら言った。その剣幕に思わず後ずさったら、へらりと笑顔を作って私に手を振った。
「俺が怒っとんのは治に対してやから、怖がらんといてや」
「はぁ」
曖昧な返事しか返せない私に、ツムさんはでも、と言う。
「あいつミスター取るやろうな、俺と同じ顔やし」
「うん、取るだろうなあ」
「ライバル増えるんとちゃう?」
「え、」
それは、ちょっと、困るかもしれない。言葉に詰まる私に、ツムさんは食えない笑顔を浮かべて私に言った。
「それが嫌なら、ちゃんと治と仲直りするんやで。明日中にな」
「えっ明日!?」
私の驚いた声にはただ意地の悪い笑みを返して、ツムさんはじゃあなと手を振って去っていった。
「……いったい何をどうしろっての」
一人残され、ぽつりと漏れた声は、学祭の活気に飲み込まれた。
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雛(プロフ) - ネオンガールさん» ありがとうございます!よかったです!!! (2018年12月24日 18時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - Blueさん» そう言っていただけるとこちらとしても非常に嬉しいです!最後までお付き合いいただきありがとうございました(;;)次回作も鋭意準備中ですので、楽しみにお待ちいただけたらと思います! (2018年12月24日 18時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
ネオンガール(プロフ) - 雛さん» めっちゃキュンキュンしました!!笑 (2018年12月24日 12時) (レス) id: 18c4f82065 (このIDを非表示/違反報告)
Blue - この作品のおかげで治くんがめちゃくちゃ好きになりました。作品の完結おめでとうございます!お疲れ様でした!そして、書いて下さりありがとうございました!次回作も楽しみにしています!! (2018年12月24日 1時) (レス) id: 82a4b13a9b (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - 彩兎さん» コメントと労いのお言葉たいへん嬉しいです。恋愛はもちろんですが、食について掘り下げたお話にしたかったので、少食に共感していただけるとこちらも書いた甲斐があるなと思います。こちらこそ最後までお付き合いいただきありがとうございました! (2018年12月24日 0時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛 | 作者ホームページ:https://twitter.com/pp__synd
作成日時:2018年11月4日 17時