メメント・モリ的な何か【宮侑】 (ページ8)

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的ページ8

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　――っていうのも、夢だったらしい。

　俺の頭の中は大混乱していた。治と肩を並べて行ってきますと玄関を出たはずだったのに、今俺は毛布の中にいる。そこまで変な汗はかいていないけれど、やたらと心音がうるさい。俺は枕元の携帯を手探りで探して、起きる時間の三十分前であることを確認した。

　夢の中で夢を見た。そんなのってありなのか。少なくとも、俺はこんな夢を見るのは記憶の限り初めてだった。もう最初の夢――小松Aが死ぬ夢は、本当にぼんやりとしか覚えていない。手紙で呼び出されて、断ったら飛び降りていった、みたいな、そんな曖昧な記憶だ。

　ベッドの中で寝返りを打つ。二段ベッドがきしむ音が二人分。治も起きているらしい。

「なあ治、起きとるか」
「……なんや」

　眠そうな声がベッドの板越しに聞こえる。起きていたらしい。俺はスマホでSNSを追いかけながら、向こう側に向かって聞いた。

「お前今、何とかモリンゴみたいなプリンにはまっとったりせんか」
「なんやそれ、メメント・モリのことか？」
「あ、そう、それや」

もはや夢と現実の境界すらあやふやだ。今の俺ももしかしたらどこかの世界線の俺が見ている夢なのかもしれない、と思った。それならそれでいいのだけれど。

「意味知っとるか」
「いや、知らん」

　この現実の治はメメントモリモリの意味を知らないらしい。

　結局あのマトリョーシカのような夢が何を伝えたいのかすら分からなかった。まあ夢なんて所詮夢で、意味の無いものだから気にする必要もない、そう思ったけれど。

「侑、意味知っとるんか？」
「死ね的な？」
「社名にそんなんつけるか普通？」
「お偉いさんがイカレポンチなんやろ、知らんけど」

　適当なことを言って、俺は毛布から出た。そろそろ目覚ましも鳴る頃合いだろう。