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体育座りをやめて、芝生に寝転んだ。
痛いほどに澄み切った青が視界を埋め尽くす。
隣で夜久も同じように寝転んだ気配がした。
わたしはそっちを見ないまま、ただ空だけを見つめた。
「いい天気だなあ」
「うん」
空を眺めたまま、ぽつりぽつりと言葉を交わす。
穏やかに移っていく話題はいつしかバレーの話になっていた。
一段と熱のこもったその声は心地よく私の鼓膜を揺らした。
こういう夜久の話なら延々と聞いていたい。
時折相槌を返しながら、ぽかぽかした日差しが盛夏服をあたためていく心地よさを感じる。
「……夜久は、ほんとうにバレーが好きなんだね」
「おう」
仰向けのまま、顔だけで夜久を見た。きらきらした瞳は無垢で透き通っている。
羨ましくて、どこか眩しい。その瞳に吸い込まれてしまいたいと思うのを、慌ててかき消した。
ゆっくりと上体を起こし、立ち上がったわたしは、ワンピースの尻の部分についた芝生を手のひらでぱたぱたと叩いた。
そのたびに太ももに当たる裾がこそばゆい。
わたしに倣い立ち上がった夜久が、わたしの背中に手を伸ばした。
「いっぱい草ついてる」
言いながら、背中を優しくはたかれる。
ばさばさと音を立てる盛夏服は汚れてしまっただろうか。
「髪も触っていい?」
「あ、うん」
そこは触っていいか聞いてくれるんだ、と思いながら、夜久がわたしの髪についた草を取ってくれるのを、されるがままにしていた。
そっと摘み上げられてはするりと離される。
それが何度か繰り返されるうちに、すこしだけどきどきしてしまった。
さっきそんなことを思っちゃいけないって心に決めたのに。
誤魔化すようにかぶりを振ったら、動くなよ、なんて声が聞こえてきて、ごめんと肩をすくめた。
それからもういちど、念入りに背中がはたかれる。
どうせもう着ないからいいのに、なんて、言おうとしたけど、やめた。
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@でに(プロフ) - 恋すてふ制服 とてもおもしろかったです……きゅんきゅんしました! (2020年4月24日 17時) (レス) id: c5f18c8481 (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - 華ノ子さん» コメントありがとうございます。一年以上経ってしまいましたが、本日追加いたしましたのでご覧いただけたら嬉しいです。 (2020年4月23日 23時) (レス) id: b56c38f9b7 (このIDを非表示/違反報告)
ティラミルク(プロフ) - 何回読んでも大好きです。 (2019年10月28日 19時) (レス) id: 936ff86ce1 (このIDを非表示/違反報告)
花籠(プロフ) - めっちゃ面白かったです!!エモエモでした!短編なのに一本の愛がをみた気分になりました!お疲れ様です。 (2019年10月24日 18時) (レス) id: 270ba45bd9 (このIDを非表示/違反報告)
華ノ子(プロフ) - おもしろかったです。制服最後の日の物語はありますか…? (2019年1月17日 1時) (レス) id: ed7dadd27f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛 | 作者ホームページ:https://twitter.com/pp__synd
作成日時:2018年12月26日 12時