劈くは静かな騒音 ページ5
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日が高くなるにつれ、それに比例するように背徳感が増していく。
公園でさんざん小学生みたいにはしゃいでから、そこを後にしたわたしたちは、近所の小さなショッピングセンターの中にあるゲームセンターにやってきた。
時刻は十時過ぎ。ほぼオープンと同時に突入した。
全然人のいないゲームセンターを一周する。
ゲームセンター特有のあちこちから聞こえるうるさいゲーム機の音を聞いているのはわたしたちしかいない。
不気味なくらいうるさいのに、不気味なくらい静かだ。
こんな異世界のようなゲームセンターに来たのは初めてだった。
両替機で財布にあった千円札を崩した。
奥の方に並んだレースゲームに、小銭を入れる。
ワンピースの裾に触れ、するりと太ももに滑らせながら機体の椅子に座れば、隣の椅子に座った夜久も同じように小銭を入れた。
隣の機体を指定して、対戦モードを選ぶ。
「これ俺いつも部活のやつらとやってるんだよね」
「ちょっとは手加減してね」
そんな言葉を交わして、合図とともにアクセルを踏み込んだ。
百円で三レース。全敗だった。勝ち誇ったように隣で笑みをたたえる夜久の腕を叩く。
「手加減してよ!」
「わりいわりい!」
笑う彼に頬を膨らまして、わたしは立ち上がった。
椅子に残ったスカートがさらりと落ちて太ももに当たる。その感触が、さらにわたしの背徳感を掻き立てた。
足元に置いていたリュックを拾い上げ、片方の肩にだけ掛ける。
エナメルを肩にかけた夜久が、目を輝かせてこちらを見た。
「A、いま彼氏とかいなかったよな?」
「どうせ女子校ですよーだ」
わたしの返答に満足げに頷いた彼は、わたしの手首を掴み、ゲームセンターの中を迷うことなく突き進んでいく。
立ち止まった彼に合わせて見上げれば、そこは。
「お前のおススメ教えて!」
「夜久がクソ可愛くなるやつにしてあげよう」
「それはちょっとヤダ」
モデルの写真があちこちにプリントされた機械の合間を縫いながら、(不本意ながら)カップルモードがあるものを探す。
そのうちの一つによさげなものを見つけて、明るいライトがいくつもついた内側に荷物を置いた。
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@でに(プロフ) - 恋すてふ制服 とてもおもしろかったです……きゅんきゅんしました! (2020年4月24日 17時) (レス) id: c5f18c8481 (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - 華ノ子さん» コメントありがとうございます。一年以上経ってしまいましたが、本日追加いたしましたのでご覧いただけたら嬉しいです。 (2020年4月23日 23時) (レス) id: b56c38f9b7 (このIDを非表示/違反報告)
ティラミルク(プロフ) - 何回読んでも大好きです。 (2019年10月28日 19時) (レス) id: 936ff86ce1 (このIDを非表示/違反報告)
花籠(プロフ) - めっちゃ面白かったです!!エモエモでした!短編なのに一本の愛がをみた気分になりました!お疲れ様です。 (2019年10月24日 18時) (レス) id: 270ba45bd9 (このIDを非表示/違反報告)
華ノ子(プロフ) - おもしろかったです。制服最後の日の物語はありますか…? (2019年1月17日 1時) (レス) id: ed7dadd27f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛 | 作者ホームページ:https://twitter.com/pp__synd
作成日時:2018年12月26日 12時