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海の青と空の青との境界線は、今日もあの日と変わらずわたしたちの前に広がっていた。
押し寄せては引いていく波が砂を洗う静かな音と、わたしたちの呼吸の音だけが響いていた。
人がいないのは、やっぱりまだ寒いからだろうか。海も冷たいだろう。
また裸足になって飛び込んでみたい気持ちはやまやまだけど──
「冷たいかな」
わたしの思考を遮るようにそう言った夜久がスニーカーを脱ぎ、靴下をその中に詰めた。
そのまま波打ち際に駆け出す彼は、寒さよりも海で遊ぶ方を取ったみたいだ。
ならばとわたしもローファーと靴下を放り出して夜久の背中を追いかける。
「つめてーぞ!」
一足先に足首まで海に浸かった夜久が、わたしに向けて叫ぶ。
「知ってる!」
わたしはそれだけ返して、勢いをつけてジャンプした。
ジャバッと音を立てて、膝の上まで水滴が飛ぶ。肌の上を伝って落ちていく塩水は冷たい。
足の裏に感じる濡れた砂の感触はどこか心地よかった。
「つめたい!」
「言っただろ」
「でも楽しい!」
「俺も!」
夜久よりも深いところにいるわたしを見て、夜久が親指を立てる。日の光を浴びて輝く彼の笑顔がわたしの鼓動を不意に煽った。
逃げるように見つめた膝の下でゆらゆらと揺れる水面は、きらきらと陽光を反射して輝いている。
そのまま視線を遠くに投げれば、混ざり合う二つの青。
あの時と同じ空の青と海の青。
少しだけ浮かぶ雲が境界線に溶けていた。
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@でに(プロフ) - 恋すてふ制服 とてもおもしろかったです……きゅんきゅんしました! (2020年4月24日 17時) (レス) id: c5f18c8481 (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - 華ノ子さん» コメントありがとうございます。一年以上経ってしまいましたが、本日追加いたしましたのでご覧いただけたら嬉しいです。 (2020年4月23日 23時) (レス) id: b56c38f9b7 (このIDを非表示/違反報告)
ティラミルク(プロフ) - 何回読んでも大好きです。 (2019年10月28日 19時) (レス) id: 936ff86ce1 (このIDを非表示/違反報告)
花籠(プロフ) - めっちゃ面白かったです!!エモエモでした!短編なのに一本の愛がをみた気分になりました!お疲れ様です。 (2019年10月24日 18時) (レス) id: 270ba45bd9 (このIDを非表示/違反報告)
華ノ子(プロフ) - おもしろかったです。制服最後の日の物語はありますか…? (2019年1月17日 1時) (レス) id: ed7dadd27f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛 | 作者ホームページ:https://twitter.com/pp__synd
作成日時:2018年12月26日 12時