検索窓
今日:2 hit、昨日:17 hit、合計:76,475 hit

午前八時の空中遊泳 ページ3




補導されたらどうしよう、という考えは、今日だけは捨てることにしよう。


学校をさぼることに決めた夜久とわたしは、手始めにひとけのない児童公園にやってきた。
というのも、遊びに行こうにも今はまだ八時前で、どこも開いていないのだ。


二人で入った児童公園はそこそこ新しい公園だからか、朝の日の光を反射して遊具たちが煌めいている。


――誰もいない公園で、こんな朝から、違う夏服を着て。


なんだか背徳感に満ち満ちている。

後から食らうと分かっていた親や教師の説教のことを吹き飛ばしてしまうくらいの高揚がわたしの心にはのさばっていた。


誰か子供がやったのだろうか、小さな板の両端に鎖が絡まってえらく座面が高くなっている。
わたしはその鎖を解いて、秋の空気で冷たくなった鎖を握った。
勢いをつけて地面を蹴って往復する景色を見たら、自分が高校生であることを忘れてしまいそうだった。


「久しぶりだ、こんなの!」


全力でブランコをこいだのなんていつぶりだろうか。それこそ小学生以来なんじゃないかと思う。
はしゃぐわたしを見て、夜久はスラックスの裾を二回ずつ折り曲げ、わたしの隣のブランコに立ち乗りした。

二人分の大人──いや、まだ大人になりきれてはいないか、子供でもないけれど──の体重を乗せたブランコの支柱がきしむ。
わたしたちの質量は大人だったけれど、心は完全に子供だった。


行ったり来たりする秋晴れの空をしばらく眺めてから、わたしは勢いに任せてブランコを飛び降りた。
こんなにアグレッシブなことをしたのはあまりにも久しぶり過ぎて、バランスを崩したわたしは思わずブランコの前の低い柵につんのめった。

そのままぐるんと鉄棒みたいに上体を前に倒せば、後ろで質量を失ったブランコがむなしく揺れているのが見える。

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (318 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
160人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

@でに(プロフ) - 恋すてふ制服 とてもおもしろかったです……きゅんきゅんしました! (2020年4月24日 17時) (レス) id: c5f18c8481 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 華ノ子さん» コメントありがとうございます。一年以上経ってしまいましたが、本日追加いたしましたのでご覧いただけたら嬉しいです。 (2020年4月23日 23時) (レス) id: b56c38f9b7 (このIDを非表示/違反報告)
ティラミルク(プロフ) - 何回読んでも大好きです。 (2019年10月28日 19時) (レス) id: 936ff86ce1 (このIDを非表示/違反報告)
花籠(プロフ) - めっちゃ面白かったです!!エモエモでした!短編なのに一本の愛がをみた気分になりました!お疲れ様です。 (2019年10月24日 18時) (レス) id: 270ba45bd9 (このIDを非表示/違反報告)
華ノ子(プロフ) - おもしろかったです。制服最後の日の物語はありますか…? (2019年1月17日 1時) (レス) id: ed7dadd27f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作者ホームページ:https://twitter.com/pp__synd  
作成日時:2018年12月26日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。