検索窓
今日:2 hit、昨日:5 hit、合計:284,514 hit

二十一 ページ21

用事を済ませて鬼兵隊の戦艦に帰れば、一室から不規則に鈴の音が聞こえた。
廊下に響く足音をかき消すように虚しく響くそれは、俺に罪悪感を与える。


寂しい。寂しい。


一つ一つの音がそう聞こえてしまう。

チリンチリンッ



あれはきっと、俺が与えた....。





扉に手を掛けるとピタリと鈴が鳴りやんだ。
数秒の静寂の後、代わりに帰ってきたのは「……高杉さん?」という弱弱しい声だった。



「高杉さん!」



ぱっと表情を明るくして俺を出迎えたのは、以前あった時よりも幾分も顔色の良くなったA。
主人の帰りをいつまでも待ちわびていたあの有名な犬の様だと思った。

けれど、まさに、

もし俺がこのままAを置き去りにして二度と帰ってこなかったとしても、こいつは永遠に鈴を鳴らしながら、扉の前を離れないんだろうと思った。





閉鎖空間に長期間閉じ込められれば、誰であろうと精神状態は不安定になりがちだとは思うが。
それにしてもこいつは、俺に執着を見せるようになっている。

ここに閉じ込めているのも、
縛り付けているのも、
貶めたのも俺が元凶だと言うのに。

ただ、狭い部屋の中で少しずつAがおかしくなっていくのなら本望だと思った。

部屋に女を閉じ込めている時点で、どうせ俺も社会的に常識を逸脱した人間だ。
それに応じてくれているような錯覚を起こすようで、妙な安心感が得られる。

修復不可能なほどに関係を踏みにじった俺たちに、未来が無いことは明白。
ならばどんな形であれ繋ぎ留めておいて何が悪い。



「高杉さん嘘吐きですね。ずっと鳴らしていたのに、全然気づいてくれない。」



ウサギは寂しいと死ぬんですよ、とありがちなたとえを持ち出すAは浮かれているようだった。


「兎は基本単独で生きるもんだろ。寂しくて死ぬような奴は生き残れねえよ。…それに寂しくて死ぬってんなら、甘やかされて育ったゲージの中の奴らだけだろ。」







「なら私は死んじゃうかもしれないですね。」







だってほら、とAが指を指すのは足元の枷。



「……んな可愛げのねえ兎、飼った覚えがねえな。」

「ひどいですね。可愛がってくださいよ。」



そういえばAを買った時、本当にゲージに入れられていたことを思い出した。
下らない連想を振り払う。

二十二→←二十



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (183 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
378人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 高杉晋助 , 高杉
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

沖神 - そ…そうですかw…ごめんなさいw (2017年8月16日 1時) (レス) id: 3e81e6a0f7 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - 沖神さん» ......む、無料....ですよ! (2017年8月12日 11時) (レス) id: d0946bab96 (このIDを非表示/違反報告)
沖神 - これって有料じゃないです…よ…ね?………… (2017年8月12日 2時) (レス) id: 3e81e6a0f7 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - あかあしえいたくんさん» ご感想お寄せいただきすごくすごくうれしいです...。こちらこそ、ぜひ応援よろしくお願いいたします。コメントありがとうございました。 (2017年7月13日 0時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
あかあしえいたくん(プロフ) - 高杉すごいドキドキします!すごくすごくおもしろいです!これからもがんばってください!ぜひ、応援させてください! (2017年7月10日 14時) (レス) id: 04caca4bb1 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/  
作成日時:2017年5月14日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。