二十 ページ20
何も言葉が出てこなかった。
後頭部を鈍器で殴られでもしたような強い衝撃に襲われて、ぐらつく視界。
余りに受け入れがたい事実に目を背けたかった。
まさかそんながあるだろうか?
いや、
….彼女がこうなる事はわかっていたはずだった。
何時かこんな光景を目にする時が来る事を重々承知したうえで、
俺はこうしてここに在るはずだ。
けれど人間の決意だの覚悟だのは、割とちんけなもんなわけで。
結局想像上シュミレーションした惨劇と、実際に目にする惨劇には、誤差と称すに大きすぎる違いがあった。
「.....A。」
頭を横切るのは、ふわりと花を髪にさして笑うAと
あの晩に華やかな嬌声を上げるAと
頭を地につけて懺悔するAと。
確かに息をし、血を通わせ、目に光を宿した彼女だった。
けれど舞台の上の女はどうだろう。
ガラス玉みたいだと思った。
ただ事象を反射させるだけのスクリーンで、情やら思考は伴わない。
二倍三倍と跳ね上がる値段と熱狂に包まれる場内を見渡して、女はただ寸分たりとも表情を変えようとはしなかった。
俺は考えることをやめて人をかき分け舞台に上がる。
「おいお前!何をしているさがれ!」
「…うるせぇ。」
抜刀し群がってくる雑魚の首元に刃を押し当てれば、一気に静まりを見せる。
どいつもこいつも刺激を欲している奴らばかりだからか、いきなり武器を出した俺に向けられるのは、好奇心を孕んだものばかりだった。
「おいそこのお前。」
「へっ?あっ、はっはい。」
丸腰の司会者は周囲の味方の位置を確認したうえで、裏返った返事をした。
「その女を寄こせ。」
「いえでもこれは商品ですから...。」
「―――だ。」
「は?」
「さっきの最高額の倍出す。今すぐそいつを寄こせ。」
視界の隅に映った女は、ただつまらなそうにそこに座っていた。
そのすべてを諦めきったような態度は、心底気に入らない。
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沖神 - そ…そうですかw…ごめんなさいw (2017年8月16日 1時) (レス) id: 3e81e6a0f7 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - 沖神さん» ......む、無料....ですよ! (2017年8月12日 11時) (レス) id: d0946bab96 (このIDを非表示/違反報告)
沖神 - これって有料じゃないです…よ…ね?………… (2017年8月12日 2時) (レス) id: 3e81e6a0f7 (このIDを非表示/違反報告)
しののめ(プロフ) - あかあしえいたくんさん» ご感想お寄せいただきすごくすごくうれしいです...。こちらこそ、ぜひ応援よろしくお願いいたします。コメントありがとうございました。 (2017年7月13日 0時) (レス) id: 5bb7c4f37e (このIDを非表示/違反報告)
あかあしえいたくん(プロフ) - 高杉すごいドキドキします!すごくすごくおもしろいです!これからもがんばってください!ぜひ、応援させてください! (2017年7月10日 14時) (レス) id: 04caca4bb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しののめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時:2017年5月14日 20時