〈after〉"ずっと一緒に居てね" ページ48
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人っていうのは短命だ。
母の訃報がどこかからスイスに届いて、私はスッと目を閉じた。
不老の人外ではないユンギさんとジョングクくんもすっかりおじさんになっていた。
確かにこの感覚は寂しい。
あんなに避けていた母でさえも、死んだと聞かされるとモヤモヤとした気分になった。
「A」
「ん?」
「誰から?」
「ナムジュンさん」
永遠の命っていうのは厄介で、時々住居を変えないと怪しまれる。
色んな国を津々浦々するのが一番安全だから、私とテヒョンは気が向いてソクジンさんの家を借りている。
本人は今、イタリアのフィレンツェで優雅に暮らしているらしい。
「ねえねえ、見てよこれ」
「ん?」
「Aと会った頃の写真」
「わ、懐かしい」
記憶も色々積み重なって、小さな事から消えていく。もうあの頃の同級生も顔が思い出せなくなっていた。
写真に写る私はどこかむっとした顔でメダルを掴んでいる。
「あ〜……卓球」
「楽しかったねえ」
「忘れちゃったよ」
「俺は覚えてるよ」
ニコニコと笑ってテヒョンは、あの時の思い出を語ってくれた。
あの頃は吸血鬼になりたてで、右も左も分からなくて、そして今よりもずっと意固地だった。
「忘れるって悲しいね」
「……うん」
「死なないって結構寂しい」
「そうなんだよね」
私にはテヒョンがいるし、テヒョンには私が居る。
それはすごく幸運なことで、過ぎ行く時間を孤独に暮らすのは辛い。
「A、寂しいの?」
「うん」
テヒョンはニコッと笑ってハグしてくれた。
暖かいなあ。この感覚に救われたような気持ちになるのはもう何度目か分からない。
「ありがとうテヒョン」
「うん……」
ぽんぽんと頭を撫でてくれて、私はちょっとだけ泣けた。
最近は誰かに出会って楽しい時間を過ごしても「ああ、この人は私よりも先に死んじゃうんだな」って我に返ってしまうから。
「ずっと一緒に居てね」
「うん」
あんなに重く感じていた"ずっと一緒"という言葉が、今はとても救いだ。
「俺はAが大好きだから、ずっと一緒にいるよ」
私は返事の代わりにテヒョンをギュッと抱きしめた。
少し素直になれるようになったのは、長い時間のおかげなのかもしれない。
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sai(プロフ) - のんさん» はじめまして、コメント&読了ありがとうございますー! 番外編もちょいちょい書きますので、また読んでください´`* (2019年9月14日 23時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 初めまして。楽しく読ませていただきました。完結してしまって…しばらく吸血鬼ロスでした。番外編嬉しいです!楽しみにしています! (2019年9月14日 19時) (レス) id: 94dc845851 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - チョコさん» 完結までお付き合いいただいてありがとうございまーす!その後の進展(?)した二人も書きますね〜!読んでくださってありがとうございました! (2019年9月10日 12時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - AULA−輝きさん» ストーリーがダラダラしそうで大分(他メンのエピソードとか)色々削ったので、ぼちぼち番外編てやりたいですね〜!ジミンちゃんの今的なやつもやってみようと思います^^ (2019年9月10日 12時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ(プロフ) - わぁ〜!完結しましたね!今回は推しということもあり楽しませていただきました!続編、見たいです!!基本的には作者さんにお任せですがやっぱりデートシーンみたいなのはほしいです笑笑 (2019年9月10日 1時) (レス) id: 58e918a46e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sai | 作者ホームページ:https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時:2019年8月29日 11時