41.フィヨルドにある聖域 ページ41
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北極圏は太陽が沈まない、白夜という現象が起こる。
連れてこられた場所は夕焼けとも朝焼けとも言えない太陽が橙の光を水平線の淵に横たえている。
思ったよりも寒くない、だけどどこか寒々しく感じるのはこの場所が海だからだろう。
どこか暗い赤と橙と黒い雲が海に映って、あたたかいのにどこか畏怖を煽るような風景が広がっていた。
目下には岸壁。フィヨルド特有の湾曲した崖は、底が果てしなく下にある。
｢疲れました｣
｢だろうね｣
頬を叩く強い風と長時間のフライトと大自然とで疲労困憊の私は、サクサクと前を歩くソクジンの服を掴んで足を止めた。
でも、彼は歩みを止めるつもりはないらしい。
｢……僕はここが嫌いなんだ。吸血鬼だからね。夜がない世界なんてまっぴらごめんだよ｣
｢行くかどうか聞いたのはそっちじゃないですか｣
｢冗談のつもりだったんだ。意地悪を言ったつもりだったし、君も怖気付いて行かないって言うと思ったし……思い切りが良すぎて面白がっちゃったけど、ちょっと後悔してる｣
風の音のせいでお互い叫ぶように会話をしながら、フィヨルドのてっぺんを歩く。
時間の感覚はとうになくなっていた。
時折勝手に一人で休んでいると、ソクジンは呆れたように戻ってきて、隣に座って休憩をした。
山登りなんて聞いてなかったんだから、疲れても仕方ないと思う。
でも、不思議と来なきゃ良かったとは思わない。
｢――あれだよ｣
ソクジンはふと足を止めて、遠くにある岸壁の縁を指さした。
遠くにあるそれにうっすらと目を細めて焦点を合わせると、U字の岸壁の中に不自然な岩がある。円の形をした輪のような岩が、奇跡的なバランスで立っていた。
｢あれが？｣
｢そう｣
私はごくりと生唾を飲んだ。
なんだろう、この感覚。ただの変わった岩のはずなのに、あそこからはとても嫌な感じがする。
｢反対側にいくと、あの輪から太陽が見える。その時にあの輪を通り抜けると、吸血鬼は消える｣
｢何故？｣
｢分からないよ。何故そんなことが分かったのかも、誰が初めて試したのかも、どういう理論で消えるのかも分からない。ただ、あそこでジミンは消えたんだ｣
ジミンと呼ばれたその名前はきっとテヒョンの友だだちの名前。
あの場所で永遠を嘆いて消えたテヒョンの友達は、こんな恐ろしい場所に来て、迷信にも近い儀式を行ったなんて、どれだけの覚悟があったんだろうか。
私は自分の手が震えていることに気がついた。
――私は、死ぬのが怖い
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sai(プロフ) - のんさん» はじめまして、コメント＆読了ありがとうございますー！ 番外編もちょいちょい書きますので、また読んでください´`* (2019年9月14日 23時) (
レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 初めまして。楽しく読ませていただきました。完結してしまって…しばらく吸血鬼ロスでした。番外編嬉しいです！楽しみにしています！ (2019年9月14日 19時) (レス) id: 94dc845851 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - チョコさん» 完結までお付き合いいただいてありがとうございまーす！その後の進展(？)した二人も書きますね〜！読んでくださってありがとうございました！ (2019年9月10日 12時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - AULA−輝きさん» ストーリーがダラダラしそうで大分（他メンのエピソードとか）色々削ったので、ぼちぼち番外編てやりたいですね〜！ジミンちゃんの今的なやつもやってみようと思います^^ (2019年9月10日 12時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ(プロフ) - わぁ〜！完結しましたね！今回は推しということもあり楽しませていただきました！続編、見たいです！！基本的には作者さんにお任せですがやっぱりデートシーンみたいなのはほしいです笑笑 (2019年9月10日 1時) (レス) id: 58e918a46e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sai
| 作者ホームページ：https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時：2019年8月29日 11時
