40.言い訳をする理由 ページ40
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何時間経っただろうか、飛行機特有の轟音と揺れにようやく慣れてきた頃だった。
ペラペラと口の止まらなかったソクジンがしばらく黙ったかと思うと｢やっぱりやめよう｣と独り言を漏らしたので、目を留める。
｢……キミは、人間に戻りたい？｣
｢戻りたいですよ、それはもう｣
｢じゃあ、それに命を賭けるとするならば？｣
変な質問だと思った。ナムジュン先輩の話では、私はもう人間には戻れない。
命を賭けるという言葉のその意味も、私を慎重にさせるには充分すぎる。
｢……どういう意味ですか？｣
｢いや、キミは半吸血鬼だったと思って｣
｢それが？｣
｢さっきは面白がって秘密と言ったけれど、吸血鬼には"聖域"があってね、そこに入れた者は死ぬ……つまり、光になって消える｣
｢光になる……｣
｢でも、君はまだ半分人間で半分吸血鬼。もしかしたら、あの岩を潜り抜ければ上手くいくんじゃないかと思ったんだ｣
｢……なんのことかよく分からないですね｣
はぐらかしつつも、その"聖域"という言葉に思考が巡り始める。
"岩を潜り抜ければ"、吸血鬼は光となって消える。
つまり、吸血鬼が優れば私は消え、運良く人間の要素が残れば消えないかもしれない。
そういうことなんだろう。
｢今なら、飛行機の進路を変えてそっちに向かうことも出来るよ？｣
｢スイスじゃないんですか？｣
｢うん、ノルウェー｣
｢ノルウェー……｣
遠すぎてよく分からないことになってきた。だけど、私は思わず押し黙る。
生まれてからの十五年間、これといって人間で良かったと思ったことはない。ただ、半吸血鬼という永遠の時を生きることが怖いだけ。
単に普通の人生を送りたいと思っていただけ。
その為に一かバチかの賭けをしたいか？ と問われるとそれも躊躇う。
永遠に生きるか、それとも今すぐ死ぬかというスケールの大きい話だ。
でも、私は少し躊躇った後に口を開いた。
｢行きます｣
｢あ、行く？｣
｢なんで、自分から聞いといて意外そうな反応するんですか｣
｢ははっ｣
愉快そうに笑うソクジンは立ち上がって、操縦室の方へと向かっていった。
私はすぐに窓の外を見る。雲ばかりの風景は暗く、眺めていても面白みなどどこにもない。
(場所を知っとけば、後で役に立つかも)
なんて、言い訳をする。自分でも、何故自分に対して言い訳をしているのか、分からなかった。
何故か頭を過ぎるのはテヒョンのことで。
もし、私が人間に戻ったら、どんな顔するんだろうなあって考えた。
41.フィヨルドにある聖域→←39.真夜中の鐘〈side TH〉
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sai(プロフ) - のんさん» はじめまして、コメント＆読了ありがとうございますー！ 番外編もちょいちょい書きますので、また読んでください´`* (2019年9月14日 23時) (
レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 初めまして。楽しく読ませていただきました。完結してしまって…しばらく吸血鬼ロスでした。番外編嬉しいです！楽しみにしています！ (2019年9月14日 19時) (レス) id: 94dc845851 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - チョコさん» 完結までお付き合いいただいてありがとうございまーす！その後の進展(？)した二人も書きますね〜！読んでくださってありがとうございました！ (2019年9月10日 12時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - AULA−輝きさん» ストーリーがダラダラしそうで大分（他メンのエピソードとか）色々削ったので、ぼちぼち番外編てやりたいですね〜！ジミンちゃんの今的なやつもやってみようと思います^^ (2019年9月10日 12時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ(プロフ) - わぁ〜！完結しましたね！今回は推しということもあり楽しませていただきました！続編、見たいです！！基本的には作者さんにお任せですがやっぱりデートシーンみたいなのはほしいです笑笑 (2019年9月10日 1時) (レス) id: 58e918a46e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sai
| 作者ホームページ：https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時：2019年8月29日 11時
