35.新人吸血鬼の資料 ページ35
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「A先輩って変わってますよね」
生徒会室でのんびりお茶を飲んでいたジョングクがぽつりと零した言葉に、その場にいた全員が動きを止めた。
「まあ……変わってるな」
「いつも目が死んでる」
「テヒョンとも変な関係だよね」
しげしげと頷くナムジュン。ちょっと含みのあるユンギと可笑しそうに笑うホソクの言葉に、ジョングクは「いや、そうじゃなくて……」と言葉を挟む。
「急に吸血鬼になりました……って言われて、あれだけ落ち着いてるのって不思議じゃないですか?」
「まあ、確かに」
「しかもあれで十五歳だからな」
全員の頭に思い浮かんだ新人の姿はいつも通りの無表情で、ジョングクは乾いた笑いを零した。
すると、神妙な顔をしたナムジュンが机から紙を一枚取り出して「Aなあ……」と口を開く。
「母子家庭で、父親は分からないらしい。所謂夜の仕事をしている母親が十六歳の時に産んで、幼い頃から孤独な生活をしているみたいだな」
「そうなんですか……」
「性格は割と現実主義で、自立心が強い。小学校の卒業文集に書かれた将来の夢は……サラリーマン」
「現実的〜!」
ナムジュンの持つ資料を全員が覗き込むと、そこにあった卒業文集を目の当たりにして顔を顰めた。
「雇用保険と社会保険のしっかりついた職に就いて、地に足つけた安定感のある人生を送りたい……」
「なんだこれ、就職の志望動機か?」
「小学生でこれかあ、苦労してんだね」
「……道理で家に一人で居ると思った」
「……ユンギ先輩、覗きですか」
「仕事だよ」
資料から顔を上げた全員がお互いの顔を見合わせる。
「テヒョンと真逆だな」
「思った」
「やっぱ面白いなあ〜あの二人」
困ったように笑う年上の中で、ジョングクは一人黙っていた。
「……でも、二人とも孤独な人同士って感じですね」
その場にいた全員が黙りこむ。シンとした静寂が一瞬だけ広がった。
ジョングクはそれから言葉を続けようとしたが、生徒会室の外から足音が聞こえてきて、そして扉が開かれたことで口を噤む。
現れたのは、話題の渦中にいたテヒョンその人だった。
「Aがひどいんだよ! 勉強の邪魔だからあっちいってろって!」
「……まあ、あんまり邪魔してやんなよ」
「一応学生なんだし……」
テヒョンは泣き真似をしながら席につき、そして全員で見ていた資料に目を留めた。
「なんですか? それ」
「Aの資料」
僅かに目を見開いて、テヒョンはその紙を見つめた。
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sai(プロフ) - のんさん» はじめまして、コメント&読了ありがとうございますー! 番外編もちょいちょい書きますので、また読んでください´`* (2019年9月14日 23時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 初めまして。楽しく読ませていただきました。完結してしまって…しばらく吸血鬼ロスでした。番外編嬉しいです!楽しみにしています! (2019年9月14日 19時) (レス) id: 94dc845851 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - チョコさん» 完結までお付き合いいただいてありがとうございまーす!その後の進展(?)した二人も書きますね〜!読んでくださってありがとうございました! (2019年9月10日 12時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - AULA−輝きさん» ストーリーがダラダラしそうで大分(他メンのエピソードとか)色々削ったので、ぼちぼち番外編てやりたいですね〜!ジミンちゃんの今的なやつもやってみようと思います^^ (2019年9月10日 12時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ(プロフ) - わぁ〜!完結しましたね!今回は推しということもあり楽しませていただきました!続編、見たいです!!基本的には作者さんにお任せですがやっぱりデートシーンみたいなのはほしいです笑笑 (2019年9月10日 1時) (レス) id: 58e918a46e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sai | 作者ホームページ:https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時:2019年8月29日 11時