24.サーブ練習 ページ24
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卓球台は何故か本当に生徒会室にあった。
「隣の会議室使っていいぞ」
「いや、わざわざ悪いんでいいです」
「やった〜!」
ナムジュン先輩は私の必死な抵抗も虚しくアッサリと使用許可を出してくれて、隣の会議室まで提供してくれる。
わーいと手を上げるテヒョンとガックリと項垂れる私。
初戦敗退確実で、クラスメイトから嫌われたらテヒョンのせいだ。
「はあ〜……」
「A〜とりあえずラリーしようよ」
「ラリーねえ……」
続かなければただのサーブ練習なのに、簡単に言ってくれると思う。
ニコニコ笑ってラケットを持つテヒョンは、綺麗なフォームでピンポン玉を叩いた。
カコーンという気の抜けた音と、意外にも早い玉はヒューンとこちらに飛んできて、とりあえずラケットを持った手を伸ばしたけどするっと空振り。変な姿勢で固まった。
「……」
「……」
「真面目?」
「真面目」
キョトンとするテヒョンに若干イラッとしつつそう返すと、何故かテヒョンはニコッと笑った。
「もうちょっとゆっくりやるね」
「練習したって勝てないって!」
「諦めたらそこで試合終了だよ!」
そこからテヒョンは何故か私にサーブを打ち続け、二時間じっくりと卓球に向き合うことになってしまった。
「……どうして私に卓球やらせるの」
「うーん、だって、体育祭をこのクラスでやれるのはもう最後だし」
「めちゃくちゃリア充なこと言うじゃん」
「そうかなあ」
コーラを飲みつつ、何気なくテヒョンは窓の外を見た。
「俺はずーっと学生だけど、同じメンバーで行事って出来ないから、なんか大事だなって思うんだ」
「ずーっと学生?」
「あ、そっか……Aはわかんないのかあ」
「何が?」
「俺、ここ四十年くらいずーっと学生」
「……は?」
「ほら、人間と比べて成長遅いから」
テヒョンの言葉に思わず瞬きをする。そう言えば不老不死である吸血鬼は死ににくいし老化も遅いと言っていた。つまり、テヒョンはこう見えて物凄く歳上だという可能性がある。
「え? 何年生きてんの?」
「えーっと……何年だっけ? 六十年くらい?」
「ろく……っ?!」
人間だったらとっくにおじいちゃんじゃん。
「そうなんだ〜……」
「毎年毎年学生だけど、みーんな違うメンバーのクラスだと楽しいよ」
「そうなんだ〜……」
ちょっと想像出来ない時間軸に頭が思考を停止した。
「私もそうなるの?」
「うん」
「そうなんだ〜……」
やっぱり人外って慣れそうにない。
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sai(プロフ) - のんさん» はじめまして、コメント&読了ありがとうございますー! 番外編もちょいちょい書きますので、また読んでください´`* (2019年9月14日 23時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 初めまして。楽しく読ませていただきました。完結してしまって…しばらく吸血鬼ロスでした。番外編嬉しいです!楽しみにしています! (2019年9月14日 19時) (レス) id: 94dc845851 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - チョコさん» 完結までお付き合いいただいてありがとうございまーす!その後の進展(?)した二人も書きますね〜!読んでくださってありがとうございました! (2019年9月10日 12時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - AULA−輝きさん» ストーリーがダラダラしそうで大分(他メンのエピソードとか)色々削ったので、ぼちぼち番外編てやりたいですね〜!ジミンちゃんの今的なやつもやってみようと思います^^ (2019年9月10日 12時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ(プロフ) - わぁ〜!完結しましたね!今回は推しということもあり楽しませていただきました!続編、見たいです!!基本的には作者さんにお任せですがやっぱりデートシーンみたいなのはほしいです笑笑 (2019年9月10日 1時) (レス) id: 58e918a46e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sai | 作者ホームページ:https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時:2019年8月29日 11時