22.人じゃない者 ページ22
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テヒョンは私の血を飲んで顔色が良くなったけど、それから黙って私に抱きついた。
私の肩に顔を埋めてずっと泣いていたので、離すことも出来なくてしばらく好きなようにさせた。
それにしても吸血鬼ってすごい。齧り取られて無くなっていた私の腕半分は、少し時間が経ったらピンク色の新しい皮膚になっている。
「……いつまで泣いてんの」
「だって……」
グズグズと鼻を啜りながらベッタリと私に張り付くテヒョンを、ナムジュン先輩は困ったように笑って眺めている。
とりあえず今日は送っていくよと言われて帰ることにしたけど、テヒョンは私を早く帰すつもりは無いみたいだ。
「俺、もうAと離れない」
「いや、それはそれで困る。こんな目に遭うのも嫌だけど」
「離れない!」
最早駄々っ子だ。体の大きな幼児を連れているような気分だったけど、なんとなく突き放す気にもなれなくてそのままにしておく。
ハアと最早癖になりつつある溜息をついたところで、ナムジュン先輩が口を開いた。
「俺も、本当にすまなかった。こんな危険な目にあわせてしまって」
「……私が自分の危険について分かってなかったせいですから」
「それも含めてだよ。君のことを考えたつもりで詳しく話さずにいようとしたけど、結果はこうなってしまった」
あのままテヒョンが助けに来てくれなかったら、私は生かさず殺さずの家畜生活を送っていたと思うと、恐怖が蘇ってくる。
ぞわりと背筋が凍ったら、今感じているテヒョンの暖かさが有難かった。
「……私本当にもう人間じゃないんですね」
「ああ」
「人間じゃないって、こういうことなんですね……」
人外の世界に足を一歩踏み入れると、今までの生活がまやかしのように見えた。
自分に言い聞かせるような言葉は、胸の深いところに落ちていって滞留する。
受け入れ難い現実がそこにはある。
「受け入れないといけないですね」
「……無理にとは言わないよ。昔のテヒョンもしばらく受け入れられなかった」
「そうですか……」
静かにしているテヒョンの背中をぽんぽんと摩ると、パンパンに泣き腫らした顔がこっちを見た。
「ひっどい顔……」
「ひどい!」
どうやら泣き止んだらしい。
「……今日、俺Aんちに泊まる」
「それはダメ」
「あんまり我儘言って困らせるな」
「でも、Aが心配だから!」
テヒョンはテヒョンなりに悪いと思っているらしい。うちに泊まるのはダメだけど。
一応、人間社会の中で生きてる訳だし。
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sai(プロフ) - のんさん» はじめまして、コメント&読了ありがとうございますー! 番外編もちょいちょい書きますので、また読んでください´`* (2019年9月14日 23時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 初めまして。楽しく読ませていただきました。完結してしまって…しばらく吸血鬼ロスでした。番外編嬉しいです!楽しみにしています! (2019年9月14日 19時) (レス) id: 94dc845851 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - チョコさん» 完結までお付き合いいただいてありがとうございまーす!その後の進展(?)した二人も書きますね〜!読んでくださってありがとうございました! (2019年9月10日 12時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - AULA−輝きさん» ストーリーがダラダラしそうで大分(他メンのエピソードとか)色々削ったので、ぼちぼち番外編てやりたいですね〜!ジミンちゃんの今的なやつもやってみようと思います^^ (2019年9月10日 12時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ(プロフ) - わぁ〜!完結しましたね!今回は推しということもあり楽しませていただきました!続編、見たいです!!基本的には作者さんにお任せですがやっぱりデートシーンみたいなのはほしいです笑笑 (2019年9月10日 1時) (レス) id: 58e918a46e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sai | 作者ホームページ:https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時:2019年8月29日 11時