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08.血はレモン汁で落ちる ページ9

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あーんモグモグと血を咀嚼するちみんを見ながら、未だに自分一人で血が飲めない自分が推定二歳児と同等であることに気がついて、ちょっと凹んだ。
やっぱり、この血の独特な匂いとか、なんか動物を彷彿させる感じとか、とにかくダメなものはダメ。
食事から逃げ続けて二年半。相変わらず、テヒョンから"特殊な方法"で食事を与えられている訳だけれども。
実はお腹は空いているので、限界を迎える前に何とかしなきゃいけない。


「そんな難しい顔で与えなくても」
「零しそうなんですよ」
「大丈夫。血はレモン汁で落ちる」
「ソクジンさんは落としてくれないんですよね?」
「まあね」


じゃあ、やるのは私じゃないですか。
絶対にこぼす訳にはいかなかった。血液って布につくと本当に取れない。

まじまじと血を飲むちみんを見る。
美味しそうに血を飲む子供の絵面はなかなかのインパクトがあったけれど、大人しくしている姿はそれなりに可愛いとは思う。


「はあ……」


テヒョンたちは私の誘拐にそろそろ気づいてくれないだろうか。
頼みの綱はユンギ先輩だけだ。マスコットも燃えてしまったし。


「テヒョン達の事でも考えてる?」
「まあ……はい。いつ助けに来てくれるかなって」
「気づいてるといいね」
「他人事みたいに言わないで下さいね、連れてきたのはソクジンさんなんですからね」
「仕方ないだろ、ちみんがどうしてもAがいいって言うんだから」
「……はあ」


ちみんは私を見てニコッと笑った。無邪気。いや、誘拐に加担しているので邪気しかないのだけれども。
天使のような笑顔だけど、しっかり人外なんだなあ。絆されないように気をつけなくちゃ。


「ちみんはまだ子供だからね。これから寝かしつけてあげないと」
「え、寝るんですか? 吸血鬼なのに?」
「まだ体も出来上がってないからね。短い睡眠を何度も繰り返すんだ」
「へえ……で、寝かしつけも私がやるんですね」
「うん」


ソクジンさんはすっかり私に世話を押し付ける気マンマンだった。
逆らえないのが辛い。こんな惚けた男でも、吸血鬼としての能力は段違いに強いのだから、私なんか機嫌を損ねたら生殺しになってしまう。


「テヒョンが迎えに来たら、帰りますからね?」


一応念押ししてみたけれど、ソクジンさんはのらりくらりと交わすだけだった。


「Aちゃ、ねよ?」
「はあい……」


仕方なくとぼとぼと部屋を出る。
こんな調子でドンドン滞在期間を伸ばされそうだなあ。

09.寝る以外にやる事がない→←07.吸血鬼のお食事会



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作者名:sai | 作者ホームページ:https://twitter.com/xxx___sai/  
作成日時:2020年7月16日 18時

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