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18.ゾンビの仕立て屋さん ページ19

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「――買い物って、私のなんですか?」
「キミの以外何を買うっていうのさ」


少し馬鹿にしたような溜息と共にそう告げられて、私は思わずムッとした。
分かるわけない……と内心愚痴を零しつつ、目の前をウロウロしているゾンビ達を見ないように目を逸らす。
ちみんは椅子に座ってプラプラと足をばたつかせながらニコニコしていた。


「……なんですか、この布」
「何って……ドレスだよ」
「ドレス……?」


意外にも俊敏な動きで反物を広げているゾンビ達は、いかにもなピンクや黄色のサテン布を皺なく伸ばしていた。
ドレスって。眉間に皺が寄っていく。
何がどうなってドレスなんか買うことになるのだろうか。


「え、お金って私持ちですか?」
「そこはまあ、こっちで出すよ。ほら、採寸するからそこ立って」


ピーンとメジャーを張りながら歩み寄ってくるゾンビ。私はちょっと引きつつも、言われるがままにそこに立った。
ソクジンさんは色んな布を手に取ってはあーでもこーでもと独り言を呟き、そしてちみんを見た。


「これでいい?」
「ん〜」


何故か、決定権はちみんにあるらしい。
よく分からないまま、腕を伸ばされメジャーが這っていく。


「ピンクがいいかなあ」
「エッ、嫌。ピンクは嫌です」
「ぼくはオレンジがいい」
「うーん、黄色人種にオレンジ色は……」
「じゃあAちゃは何色がいいの?」


渋る私を睨めつけるような四つの目が胡乱げにこちらを見るので、私はたじろいだ。
ここにあるのは黄色やピンク、オレンジ、白といった可愛らしいパステルカラーの布たち。
本当は黒とかグレーとか目立たない色が良かったけど、そんなものある訳もなく。
仕方なく、隅っこの方にあった薄い緑の布を取った。唯一の寒色系だったから。


「これかな?」
「え〜、ぼく、オレンジがいいのに」
「好きな色と似合う色は違うから」
「にあうとおもうのになあ……」


唇を尖らせて拗ねた素振りのちみんをスルーして、ゾンビに無理矢理その布を手渡す。
……ちょっと指で触っちゃった。やっぱりなんかひんやりした。


「ま、これでとりあえず準備はオッケーだね」
「オレンジ……」
「ハイハイ、もう決まったからいいでしょ」


呆れつつもちみんを宥めるソクジンさん。


「そもそも、これって何の準備なんですか?」


そう問うと、ソクジンさんは不機嫌な顔を更に複雑に歪めてちみんに視線を流した。
まるで、まだ言ってなかったの? とでも言うかのように。

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作者名:sai | 作者ホームページ:https://twitter.com/xxx___sai/  
作成日時:2020年7月16日 18時

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