〈taehyung〉半吸血鬼の不幸 (ページ18)

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17.記憶の留め金ページ18

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｢Aちゃのこと、大事にしてくれるひと？｣
｢まあ……大事にされてるのかな。執着って感じだけど。元々ちょっとズレてるし｣

子供みたいに私の周りをウロウロして、私の事を振り回すテヒョンの事を思い出す。
テヒョンが私の事をどう思っているのかなんて、私には分からない。
吸血鬼には恋愛感情が無くなる。生殖で増えない吸血鬼には無用のものだからだ。
だから、これは執着のようなものなんだ、と勝手に結論付けることにしていた。

｢そっかあ｣

私の答えを聞いて、ちみんはニッコリ笑った。

｢――Aちゃんにもそういうことするんだね｣
｢え？｣

はっきりとした発音で言われたその言葉に驚いて目を見開く。

｢Aちゃ、ダメなひとに捕まりそう｣
｢ハハ……何も言い返せない｣
｢あぶないなあ～｣
｢一応拒否はしてるんだけど、あっちが聞かないだけ｣

まあ、テヒョンも分かってやっている気もする。
そもそも掴みどころがないから、私も曖昧で有耶無耶のまま、面倒くさくなってそのままにしているところもある。
深く考え始めたら、私の方が傷付きそうな気がするから。

｢あ、やめた。ね……この話、終わりにしよう｣
｢Aちゃ、おなかすいた？｣
｢私は空いてないけど、ちみんはそろそろお腹空くでしょ？｣
｢うん｣

銀のパウチから血のスープを出さなきゃいけないと思うと気持ち悪いけれど、話を切るにはもうこの手しかなかった。
そろそろお昼も近いし、ちょうどいい。

｢……っていうか、どうやったら戻れるんだろ｣
｢まいごなの？｣
｢……うん｣

後ろを振り返ると同じようなドアが幾つも並んでいて、道が全然分からない。
ちみんを抱き上げて何とか引き返そうと一時間くらい歩き続けた頃、呆れた顔をしたソクジンさんが私達を見つけてくれるまでウロウロ城の中を歩き回っていた。

｢キミ、意外とふわ～っとしてるよね｣
｢ハハ……｣
｢探検もいいけど、道順くらいは覚えておきなよ｣

返す言葉がない。さっきから言いくるめられてばっかりな気がする。
集中力散漫なのはなんとなく自覚もあった。
どうやったらここを抜け出せるかを考えたり、テヒョンのことを考えたり、怖くなって考えないようにしていたりするから。

｢以後、気をつけマス｣
｢……まあ、いいよ。それより、午後はここに居てね。これから買い物するからさ｣
｢はあ……｣

買い物なんて聞きなれた言葉をぼんやり聞きながら、ちみんの口にスープを流し込んだ。