00.魔王復活 ページ1
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――テヒョンと居ると毎日退屈しない
ノルウェーに連れていかれたあの事件から二年と半年が過ぎた十月の暮れ。
無事近所の高校へと進学した私とテヒョンの元に、ナムジュン先輩から怪文書ともとれるメッセージが届いた。
「――……なにこれ?」
「どしたのA」
「いや、なんか……」
時刻はお昼の真っ只中。食堂のランチであるパックのゼリーを吸い上げているテヒョンに、私はスマホを見るように促す。
そこには一言だけ「魔王が復活した」と書かれている事だろう。
「まおうがふっかつ?」
「ドラゴンのクエストみたいじゃん。いや、分かんないけど。魔王ってなに?」
「おれも知らないかも」
「え〜」
二人して首を傾げていると、テヒョンの隣の席にトンとトレイが置かれた。
つられるように顔を上げると、神妙な顔をしたジョングクくんが席へと座る。
「……お邪魔します」
「あ、ジョングクくん。ナムジュン先輩からのやつ見た?」
「見ましたよ。だから来たんじゃないですか」
じとっと据わった目で睨まれて、思わず乾いた笑みが零れた。
多分、この二人ほんとに能天気だなあなんて呆れられているに違いない。
案の定テヒョンは飲み終わった空のパウチを膨らませたり萎ませたりして遊んでいる。
「……魔王ってナニ?」
テヒョンから視線を戻してそう尋ねることにした。
「俺達人外の王って言われてる存在です」
「え、人外って王政だったの?」
「いや、どっちかというとあだ名みたいな感じです。いつも居る訳じゃないし。ただ、数百年に一度か二度くらいに、強い力を持った個体が産まれると、魔王って呼ばれるんです」
「ふーん……流石、詳しいね」
「A先輩はともかく、テヒョンさんなら知ってる筈なんですけどね」
俺より長生きしてるし……と困惑気味に白米を頬張ったジョングクくんに、何故か私が申し訳ない気持ちになった。
「多分、A先輩は何も分かってないだろうから言っときますけど……」
「ん?」
「俺達、復活した魔王に挨拶に行かないといけないんですよ?」
「あ、挨拶?」
「各国に散らばった人外がスイスにある魔王の城に挨拶に向かうんです」
「え?!」
「今年の開催は十一月一日だろうって言われてます」
「うそ、二週間もないじゃん!」
魔王なんていう突拍子もない単語だけじゃなく、挨拶、人外、スイスというスケールの大きい話に思わず目を見開く。
「飛行機代、どうしよ」
「あ、そこなんですね」
――また苦笑された。
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作者名:sai | 作者ホームページ:https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時:2020年7月16日 18時