44.祈りは届かないもの ページ44
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ソクジンの額にある紋様が一層光を放った。
緩んだ手を逃れてユンギさんと視線を合わせると、真っ白い血の気の失せた顔でフラフラと立っているその姿の周りにはキラキラとした光の欠片たちが舞っている。
――どうして、私は泣きそうなんだろう。
傷だらけで、立っているだけでも精一杯なのに、どうしてユンギさんはそんな身体でここに来たんだろう。
｢Aは……Aにだけは手を、出さないでください｣
｢ユンギ、いい加減諦めたら？ 娘大事なのはよく分かるけどさあ、持たないでしょ？ その身体｣
｢……俺の、身体なんか……どうでもいいっ！｣
振り絞るような声で叫んだユンギさん。私と目が合うと、ぐしゃりと顔を顰めた。
その泣き顔は記憶の中の父親と同じだ。
ズルズルとその場に倒れ込んだユンギさんはそのまま地べたを這う。
テヒョンとジョングクくんが起こそうと手を伸ばしても、頭を垂れていた。
｢お願い、します……お願いします！ Aだけは、Aにだけは……｣
必死の懇願。羽根の折れたユンギさんにはもう、神様としての力がないのかもしれない。
力の無い者は強者に頭を垂れて、慈悲を乞うことしか出来ない……――人間社会に溶け込めなかった父親のように。
この姿はいつも見ていた父の姿だ。
あんなに忌み嫌っていた弱い父親の姿そのものだというのに、その父は今、命を賭けているのだと思うと目を背けることが出来なくなっていた。
｢お父さん｣
涙が溢れてきて、視界が揺らぐ。水の膜が光を受けて目の中で何重にも光る。
その光が僅かに明滅している事が、父の命の希薄さを暗示しているようだった。
｢娘だけは……ってさ、村の人間達もよく使ってる言葉じゃない？ それを今まで無視してきてさ、今度は自分の娘だけは……っていうのはちょっと都合が良すぎるんじゃないの？｣
｢……っ｣
｢それに、この村の神はもうお前じゃないだろ？ 僕は気に入ってるんだよ、君の娘。神と人の間に生まれた子だし、顔も好みなんだ。木にするのが勿体ないくらいだよ｣
神様っていうのは、時に無慈悲だ。
ご利益や奇跡なんて言葉はよく聞くけど、叶った話は数少ない。
相手がどれだけ必死に祈っていても。
――神様が助けてくれないのなら、誰が助けてくれるんだろう？
そんな疑問が一瞬だけ浮かんで、すぐに答えは出た。
――……そんなの、自分以外に居ないじゃないかってすぐに思ったから。
私は生まれてから一度も神様になんか祈ったことはない。
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sai(プロフ) - fanさん» コメントありがとうございます 文脈とかはあんまり考えてないんですけど、読みやすかったら何よりです^^* 楽しんでください〜 (2020年2月29日 13時) (
レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
fan(プロフ) - コメント失礼します。まだ数話しか読んでいないのですがとても文脈がしっかりしていて読みやすく楽しい作品だなと思いました。 (2020年2月27日 16時) (レス) id: b1b69e3863 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - カナタさん» 番シリーズから！ありがとうございます！ 今回も全員総出演で不穏面白く書きたいと思いますー 完結まで楽しんでください〜 (2020年2月14日 21時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
カナタ(プロフ) - はじめましてです^^ 番シリーズから飛ばせていただきました！題名から田舎でのんびり系かと思いきやファンタジーな内容にハラハラしながら読ませていただきました！ま未だ出ていないメンバーもいまし今後も更新楽しみにお待ちしてます！ (2020年2月14日 2時) (レス) id: 684671b8cd (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - はじめましてさん» こちらこそありがとうございます〜 ほんと好きなように書いてるんで、好みに合って嬉しいです^^ これからも好きに書くので、気が向いたら読んでやってください！ (2020年2月11日 13時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sai
| 作者ホームページ：https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時：2020年2月5日 13時
