42.ルーツ ページ42
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｢でも、僕はまだ贄を貰ったことはないんだ。新参者だし｣
十五年前にソクジンが外からやってきて、この村の神様だったユンギさんは私の家に追いやられた。
……じゃあ、今までユンギさんが生贄を貰ってたってこと？
モヤモヤと不信感のようなものが募る。
すると、顔を顰めた私を見たソクジンがケラケラと笑った。
｢本当に何も知らされなかったんだね、君｣
｢だから、そう言ってるじゃないですか｣
｢いや、そうじゃなくてさ｣
――ユンギも、上手く隠したよなあ〜って。
ソクジンはそう意味深に呟くと、グイッと私の顎を上げた。
無駄に整った顔がすぐ近くにある。顰めっ面の私とは対象的に、ソクジンはニタニタと笑っていた。
額の紋様が怪しく煌めいて、ゾクリとする。
｢僕は君を待ってた。君だから欲しかったんだ。誰でも良かった訳じゃない｣
｢意味が、分からない｣
｢だから面白いんだよ。自分がどうしてこの村に来て、どうして選ばれたのか分かってない。君は自分が何者なのかを知らない｣
私が何者なのか？
ソクジンの言葉を反芻しても、困惑が深まっていくだけだった。
｢ユンギさんは、私に何を隠したの？｣
｢違うよ。ユンギが君を隠したんだ｣
｢ユンギさんが？｣
ユンギさんは私に何も言わなかった。
この村の事も、変な風習も、私の運命も。
だけど、ソクジンは隠していたという。私の存在は、一体どんな意味があるんだろう。
｢君の父親は今何をしている？ どうして母親は死んだと言い、こんな風習のある村へと君を寄越した？ 変だと思わなかった？｣
｢私の父親は……｣
記憶の中の父親は、私にとって取るに足らない存在だった。
いつも仕事で何処かに居て、時折帰ってきても静かに煙草をふかして空を見上げているぼんやりとした男。
私になんか興味がないとでも言いたげに、人生の殆どに介入してこない臆病で甲斐性のない平凡な……ユンギさんに少し似ている口下手なお父さん。
｢――ユンギさんなの？｣
何故、私はそう口をついたのか自覚はなかった。
何がどうして頭の中で繋がったのかも分からなかった。
ただ時折、ほんのふとした瞬間に、ユンギさんは父親に似ているなあって思った事があるだけ。
草臥れた様子、下手くそな雑談、ぎこちない会話、そして大事な事が起こると私を蚊帳の外に置くところ。
脳裏には幼い頃から仕事で叱られる父親の情けない姿が浮かんだ。
父親はいつも電話越しに謝っていた。私はそんな父親の姿が大嫌いだった。
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sai(プロフ) - fanさん» コメントありがとうございます 文脈とかはあんまり考えてないんですけど、読みやすかったら何よりです^^* 楽しんでください〜 (2020年2月29日 13時) (
レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
fan(プロフ) - コメント失礼します。まだ数話しか読んでいないのですがとても文脈がしっかりしていて読みやすく楽しい作品だなと思いました。 (2020年2月27日 16時) (レス) id: b1b69e3863 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - カナタさん» 番シリーズから！ありがとうございます！ 今回も全員総出演で不穏面白く書きたいと思いますー 完結まで楽しんでください〜 (2020年2月14日 21時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
カナタ(プロフ) - はじめましてです^^ 番シリーズから飛ばせていただきました！題名から田舎でのんびり系かと思いきやファンタジーな内容にハラハラしながら読ませていただきました！ま未だ出ていないメンバーもいまし今後も更新楽しみにお待ちしてます！ (2020年2月14日 2時) (レス) id: 684671b8cd (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - はじめましてさん» こちらこそありがとうございます〜 ほんと好きなように書いてるんで、好みに合って嬉しいです^^ これからも好きに書くので、気が向いたら読んでやってください！ (2020年2月11日 13時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sai
| 作者ホームページ：https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時：2020年2月5日 13時
