40.お母さん ページ40
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｢……あれ？ 一人で来たの？｣
社の表に出ると、退屈そうに座っているソクジンが此方を見た。
返事なんかする気になれず、私はじっとその顔を睨めつける。
｢……ユンギさんに何をしたの？｣と口をついた言葉には隠しきれない怒気が混じった。
ソクジンは相変わらず退屈そうな顔をして、溜息を吐く。
｢僕、あんまり他の男の名前、聞きたくないんだけど｣
｢私だって、そうのらりくらりと質問を交わされたくないです｣
｢君の疑問に応えないのは僕だけじゃないのに｣
｢……そもそもは貴方が原因じゃないですか｣
この村に来て生贄と呼ばれ、閉じ込められて、変な儀式に巻き込まれて。
家の人間も学校の人間も必要最低限しか私に関わろうとしない。
口を開けば生贄、祟り、お役目なんて訳の分からないことを言われて。
全てはこの神様が仕向けたことだ。
怒りを込めて視線を向けると、ソクジンは再度ハア〜っと溜息を吐いて立ち上がった。
そして、一瞬で私の目の前に現れる。
｢知っても知らなくても君の結末は変わらないよ？｣
そう言って、手をとられた。咄嗟に離そうとしても引き剥がせないそれに、押し込めていた恐怖心が疼き出す。
そんな私の怯えを悟ったのか、人を食ったような笑みを浮かべた。
｢まあ、いいや。見せてあげるよ｣
そう言って、連れていかれたのは社の周りに生えた並木だった。大きく育った老木からまだ若い背の低い木。社を取り囲むように植わっている。
｢触ってみなよ｣
そう言いつつも半ば無理矢理、一番若いであろう機の幹に手を触れさせられる。
｢……あたたかい｣
その木は嘘のように温かかった。まるで、人の肌みたいに。
ゾッと背筋に寒気が走り、思わずソクジンの方を向く。
すると、彼は狐のように目を細めて微笑んだ。
｢それ、君の母親だよ｣
言われた言葉の意味が分からず、たじろぐ。
顔も覚えていない、死んだと聞かされていた母親がこの木だとソクジンは言う。
｢どういう、意味ですか｣
｢どうもこうも、そのままさ。君の母親は十五年前に贄となった。この村の神になって、そこにいる｣
｢……だってこれ、木じゃないですか｣
｢でも、温かいだろ？｣
そうだ。この木は温かい。人肌みたいな滑らかさと温かさがある。
私は喉が一瞬で干上がるような気分になった。
｢ここにある全部の木が、贄なんですか｣
｢そうだよ｣
｢何のために？｣
ここまでして守りたいもの。この村の秘密。
一体、それはなんなんだろう。
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sai(プロフ) - fanさん» コメントありがとうございます 文脈とかはあんまり考えてないんですけど、読みやすかったら何よりです^^* 楽しんでください〜 (2020年2月29日 13時) (
レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
fan(プロフ) - コメント失礼します。まだ数話しか読んでいないのですがとても文脈がしっかりしていて読みやすく楽しい作品だなと思いました。 (2020年2月27日 16時) (レス) id: b1b69e3863 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - カナタさん» 番シリーズから！ありがとうございます！ 今回も全員総出演で不穏面白く書きたいと思いますー 完結まで楽しんでください〜 (2020年2月14日 21時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
カナタ(プロフ) - はじめましてです^^ 番シリーズから飛ばせていただきました！題名から田舎でのんびり系かと思いきやファンタジーな内容にハラハラしながら読ませていただきました！ま未だ出ていないメンバーもいまし今後も更新楽しみにお待ちしてます！ (2020年2月14日 2時) (レス) id: 684671b8cd (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - はじめましてさん» こちらこそありがとうございます〜 ほんと好きなように書いてるんで、好みに合って嬉しいです^^ これからも好きに書くので、気が向いたら読んでやってください！ (2020年2月11日 13時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sai
| 作者ホームページ：https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時：2020年2月5日 13時
