37.全力疾走 ページ37
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裏口の便所サンダルは一足。どうしようかと一瞬悩んだらジョングクくんは｢A先輩が使って｣と優しく言ってくれた。
ドタバタと急いだせいで、きっと祖父が異変に気がついたらしく家の中が慌ただしくなる。
その頃にはもう家の前の門の方へ来ていたけれど。
｢A先輩、こっち！｣
そう言ってグイッと手を引かれて、反対に行こうとしてた私は思いっきり手首が捻り上げられる形となった。なんて暴力的な筋肉なんだ……
｢A？！｣
さあ、家の敷地内から飛び出しますよ、というタイミングで背後から掛けられた声。
思わず振り返った。
｢テヒョン？！｣
｢A！ A！｣
猛スピードで駆け寄ってきたのはテヒョンだった。一人だけ白衣装じゃなくて普通の服を着ている。
｢A、その格好……｣
｢え、あ〜これは……｣
｢ジョングクも……ハッ、まさか｣
｢いや、ないないない何にもないってば｣
｢おれ、ずっと心配してたのに！｣
相変わらずぼんやりとしたマイペースなテヒョンの雰囲気に飲み込まれかけていると、焦っているジョングクくんの｢二人とも、早く！｣という声で我に返る。
｢あ、私、行かなきゃ！ 追われてんの！｣
｢おれもいく！｣
｢いや、いいって！｣
｢おれも行くってば！｣
私はもう走り出していたし、テヒョンも何故か後ろを着いてきていた。
背後に追っ手が迫っているのが見えたけど、私達は十代。全力で走れば差も開いていく。
｢A、あれから学校来ないし、家に行っても追い返されるし｣と恨み言を言うテヒョンの話を微妙に聞き流しつつ、祭の明かりでぼんやりと光る首塚の社の方へと走っていく。
｢そしたら、ジョングクとそういう……酷いぞA！｣
｢私のせいじゃないし！ 冤罪だし！ 大変だったし！｣
｢とりあえず二人とも本当に静かにしてくれませんか！｣
喋りながら走る私とテヒョンは息も絶え絶えになってきて、ちょっとイラついた様子のジョングクくんに気圧されて黙って走る。
村のあちこちでは行燈が灯され、背後からはいつしかみたいな松明をもった追っ手の気配。
田園風景に流れる風を切りながら、私たちは走って、走って、走った。
そうして、暫く走り続けて、山の麓の隘路の前まで来た。
多分、ここは前来た時に迷った場所。神様の領域だ。
｢これから、どう、するの｣
｢とりあえず、社……あそこに、秘密、あるから……｣
ゼエゼエと上がる息を整えて、山を見上げた。
月明かりが、明るい。
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sai(プロフ) - fanさん» コメントありがとうございます 文脈とかはあんまり考えてないんですけど、読みやすかったら何よりです^^* 楽しんでください〜 (2020年2月29日 13時) (
レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
fan(プロフ) - コメント失礼します。まだ数話しか読んでいないのですがとても文脈がしっかりしていて読みやすく楽しい作品だなと思いました。 (2020年2月27日 16時) (レス) id: b1b69e3863 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - カナタさん» 番シリーズから！ありがとうございます！ 今回も全員総出演で不穏面白く書きたいと思いますー 完結まで楽しんでください〜 (2020年2月14日 21時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
カナタ(プロフ) - はじめましてです^^ 番シリーズから飛ばせていただきました！題名から田舎でのんびり系かと思いきやファンタジーな内容にハラハラしながら読ませていただきました！ま未だ出ていないメンバーもいまし今後も更新楽しみにお待ちしてます！ (2020年2月14日 2時) (レス) id: 684671b8cd (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - はじめましてさん» こちらこそありがとうございます〜 ほんと好きなように書いてるんで、好みに合って嬉しいです^^ これからも好きに書くので、気が向いたら読んでやってください！ (2020年2月11日 13時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sai
| 作者ホームページ：https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時：2020年2月5日 13時
