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「……Aさんのお父さん、俺、何か苦手で」
本人には聞こえないくらいの声で、イナサが言う。
直情的な彼にしては珍しい、小さな声だ。
友だちを悪く言われて、気分が良いはずないだろう。
この口ぶりからすると、Aの父親が彼女をこのように言うのは初めてではなさそうだ。
「言い過ぎなんじゃねぇの、とか色々言っても逃げられるみたいな……モヤモヤして……」
制帽の下の頭をぽりぽり掻きながら、イナサは言う。
彼もまた、やりきれない思いを抱えているのだろう。
かといって、家庭の事情だ。
そこに踏み入るのが難しいことを、轟はよく知っている。
俯いているAの表情は、ここからでは分からない。
反抗的ではないことは確かだ。
反論したり、睨んだり、父親に敵意を向けてはいない。
まるですべてを諦めているかのように。
宇宙人は『ごっこ』ではないだとか、そんな反論もなく、Aは自分の靴の先を見ていた。
父親に目を向けることも、轟たちを見ることもなかった。
教師陣と話していたAの父は丁寧に頭を下げた後、Aの華奢な腕を掴む。
それが乱暴に見えたのは目の錯覚か。
あるいはAが言う『地球人のフィルター』なのか。
「帰るぞ、A」
「……うん」
車のドアを開けた父親に促され、Aは助手席へ。
車の中の彼女と目が合う。
いつもより虚ろな赤い瞳が、驚いたように丸くなる。
Aはひらひら、小さく手を振って見せた。
「これは、内緒の話。
……このひと、私が宇宙人だってバレたら解剖されちゃうかもって、心配で……だから、ちょっと厳しい」
小さな声。弱々しい声。
いつもと同じ透明な声がそう聞こえてしまったのも錯覚？
「……またね、地球人くん」
Aと、彼女の父親を乗せた車が発進する。
残ったのは、行き場のない気持ちだけ。
遠くなる車の影を見て、爆豪は独りごちた。
「――馬っ鹿みてェ」
小さく舌打ち。
その苛立ちは、どこから生まれた気持ちなのだろう。
そして、どこへ向けるべき気持ちなのだろうか。
「宇宙人なんて、いるわけねェだろ」
けれど、轟はいると思った。
この世界に、宇宙人がいてほしいと思った。
そうでないと、あまりにも。
あんまりにも、報われないじゃないか。
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るいるい＊*(プロフ) - ヨシさん» コメントありがとうございます！ 応援の言葉、とっても嬉しいです！ (2019年7月10日 18時) (
レス) id: d4f8fbb131 (このIDを非表示/違反報告)
るいるい＊*(プロフ) - 蛍狼 ＆ ローシさん» 応援ありがとうございます！ ずっと書きたかった話なのでそう言っていただけると嬉しいです！ これからもよろしくお願いしますv (2019年7月10日 18時) (レス) id: d4f8fbb131 (このIDを非表示/違反報告)
ヨシ - 夢主ちゃんがすごく不思議可愛いです！応援してます！ (2019年7月10日 18時) (レス) id: 83a9ab1185 (このIDを非表示/違反報告)
蛍狼 ＆ ローシ(プロフ) - 高校が士桀高校なのが個人的に凄く好みです！夢主ちゃんと天然くん達の絡みや、かっちゃんとのコントのような絡みもめっちゃ面白いです！後、地球人に爆笑しました！更新頑張ってください！応援してます！ (2019年7月10日 15時) (レス) id: cc961492f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：るいるい＊* | 作成日時：2019年7月10日 6時
