00：士傑高校の宇宙人 ページ2
...
夜嵐イナサのクラスには宇宙人がいる。
もちろん、自称:宇宙人だ。
独特の雰囲気こそ持っているが、人間との差異なんてないし、健康診断なんかでもそのことは証明されている。
だがイナサはまっすぐで、根っからの単細胞であるわけだから、たまにその宇宙人を自称する女の子が、本物のような気がしてならないのだった。
「……私、宇宙人なの」
真っ白な髪は天の川。
吸い込まれそうな瞳はさそり座のアンタレス。
血管が透けてしまいそうなほど真っ白な肌は、彼女に不気味な雰囲気を与えている。
小さな顔に造られた顔のパーツは精緻に整ってこそあれど、普段の言動は不思議ちゃんそのもの。
そのため彼女はクラスから、ほんのちょっぴり浮いた存在だった。
「だからヒーローになって、故郷の星に帰るの」
「へぇ！！ Aさんの故郷の星ってどこスか！！」
「……月」
「月！ 案外近いっスね！！」
でも、イナサには関係ない。
彼もまたあまりにも前傾姿勢すぎて、空気というのを無視してしまうからだ。
感情表現が薄い彼女とはまさに、対称的な性格。
けれど、どこかで似ているのかもしれない。
イナサは彼女と一緒にいると気が楽で、何だかわくわくした気分になるのだ。
「Aさんが月に帰っても、ロケットあれば会えるかな！！」
「……無理、だと思う。
月の宇宙人は地球人に見つからないようにシェルターをつくってるの。だから見えないし、会えない」
「えー！？」
どこまでが作り話で。どこまでが彼女の嘘で。
そして、どこまでが彼女の『本当』なのか。
イナサには分からないし、詮索しようとも思わない。
それでも確かにイナサは、彼女の友だちだった。
彼女がそうでありたいと願ったことがこの言葉なら。
この不思議な言葉たちならば、イナサはそれを頑なに、ずっと、信じ続けよう。
士傑高校には宇宙人がいる。
いつも電波を受信している、不透明な女の子。
感情表現が薄くって、ぼんやり見える女の子。
影巳Aは、そんな女の子。
士傑高校の宇宙人は、今日も夜空を夢見てる。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 86人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るいるい＊*(プロフ) - ヨシさん» コメントありがとうございます！ 応援の言葉、とっても嬉しいです！ (2019年7月10日 18時) (
レス) id: d4f8fbb131 (このIDを非表示/違反報告)
るいるい＊*(プロフ) - 蛍狼 ＆ ローシさん» 応援ありがとうございます！ ずっと書きたかった話なのでそう言っていただけると嬉しいです！ これからもよろしくお願いしますv (2019年7月10日 18時) (レス) id: d4f8fbb131 (このIDを非表示/違反報告)
ヨシ - 夢主ちゃんがすごく不思議可愛いです！応援してます！ (2019年7月10日 18時) (レス) id: 83a9ab1185 (このIDを非表示/違反報告)
蛍狼 ＆ ローシ(プロフ) - 高校が士桀高校なのが個人的に凄く好みです！夢主ちゃんと天然くん達の絡みや、かっちゃんとのコントのような絡みもめっちゃ面白いです！後、地球人に爆笑しました！更新頑張ってください！応援してます！ (2019年7月10日 15時) (レス) id: cc961492f3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：るいるい＊* | 作成日時：2019年7月10日 6時
