116:恋 ページ26
.
よろよろと起き上がり、がれきをかき分ける。
外は交戦中。
目まぐるしい動き。激しい戦い。
背後のがれきなんて意識にないだろう。
既に体力を消耗した状態で強く個性を放出したため、視界は回っているが……動けないというほどじゃない。
オールマイトと近接戦闘をしている『先生』がほしいのはこの個性。
今すぐにでも加勢して……
「……？」
そう考えつつ、外の様子を伺っていたAの足首を誰かが掴む。
おかしい。
ここにいるのはお茶子とAだけだ。
お茶子にはさっき、個性を使った。
大の大人でも動けなるくらいのフェロモンを使って、意識をトばしたはずだ。
とっくにAの虜になっているはず。
理性を吹っ飛ばして、すやすや眠ってしまっているはずなのだ。
――なのに、
「……だめ、だよ」
どうして、彼女は。
――まだお茶子は、動けるんだ？
「ぅ……っ！？」
「言ったやろ……Aさんを、守らせてって」
おかしい。おかしい。
こんなことは……ありえない！
Aの個性は強力だ。
除籍されてから性能を伸ばし……お茶子くらいの少女が相手なら丸一日は行動不能にできるはず。
そう、そのはずなのだ。
こんなことは、絶対に――…
「人間を……虜にする、フェロモン。
強いね、すごい個性だ……けど、」
よろめきながら、お茶子が近づく。
Aに触れる。頬に触れる。
戸惑い揺れる淡いグレーに、微笑みをひとつ。
――抱きしめられた。
華奢な腕だ。柔らかい腕だ。
そして暖かく、優しい腕だ。
ずっと、これを探していた気がした。
こうして、抱きしめられたかったような――…
「――私、もうAさんの虜やもん」
とても優しい声だった。
鈴を転がすような朗らかで、柔らかい声。
「ほんとのAさんが、好きなんやもん。
個性で好きになんて、虜になんて……なれへんよ」
あやすように、撫でられた背中。
肌と肌が触れあえば……暖かい何かが、頬を伝った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 339人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るいるい＊*(プロフ) - 遥亜さん» コメントありがとうございます！リクエストもとっても嬉しいですvV 今書いているものが完成したら是非とも書かせていただきますね！ (2019年6月12日 13時) (
レス) id: d4f8fbb131 (このIDを非表示/違反報告)
遥亜(プロフ) - 完結おめでとうございます！リクエストいいですか？是非主くんと一年A組のみんなが仲良くしているのを見てみたいです！一年A組のお手伝いとして訓練に参加したりしてもらいたいです！お願いします！ (2019年6月12日 11時) (レス) id: b6c422ed28 (このIDを非表示/違反報告)
るいるい＊*(プロフ) - 星の桜さん» コメントありがとうございます！ 尊いと思っていただけたのなら嬉しいですvV (2019年5月30日 8時) (レス) id: ba7b003d03 (このIDを非表示/違反報告)
星の桜(プロフ) - 反則...尊しをさせるきぃ...？ (2019年5月30日 6時) (レス) id: d8fdca1aee (このIDを非表示/違反報告)
るいるい＊*(プロフ) - タクさん» ありがとうございます！ 私に書ける最大級の甘々を目指しましたvV (2019年5月29日 21時) (レス) id: ffc7d791fa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：るいるい＊* | 作成日時：2019年5月23日 18時
