110:ボーイミーツ ページ20
.
ふわりと透けるような淡い色の髪は、じっとりと液体に濡れている。
筋張った白い指も、痩せた腕もすべてが何かに濡れていて。
げほ、げほと苦しげに咳き込み、何かを吐き出したA。
そのまま地面に倒れ伏し、鈍い音を立てて動かなくなった。
「あれは……合宿の時の……！」
「……Aさんっ！」
――Aは、何かに沈められていたように、全身が濡れていた。
白い布だけで身体を覆い、後は何も身につけておらず。
何かの実験にでも使われていたかのような、ひどい有り様。
顔色だって当然悪く、身体は小刻みに痙攣している。
一体、何があったのだろう。
お茶子にはわからない。
わからないが、彼が危険な状態であることは分かる。
「あのひと、元雄英の……！」
「何らかの被害者ならば救護と通報を……ここから隔離しなくては！」
「なら……私が！」
Aに最も近い場所にいるのはお茶子だ。
周囲を警戒しつつも、壁と壁との狭い隙間を駆けた。
触れたAの身体は、あまりにも冷たくて。
上半身を抱き起こしてやれば、再び咳き込み、液体を吐き出す。
薄い緑色のような、青色のような液体。
ぜぇぜぇと肩で息をしながら、げほり、げほりと嘔吐する。
液体がかかることも、衣服が濡れることも気にしなかった。
白い布を身体に巻き付けてやり、体温を確保。
吐しゃ物をのどに詰まらせないように気道を確保し、背中をさする。
ほんの15秒ほどだろうか。
しばらくすると落ち着いたらしく、Aはゆっくり顔を上げ――…
「……あ、はは… 幻覚、かな……？」
まるで、うわごとのようにAが言う。
今にも泣き出しそうな笑顔で、彼は言う。
お茶子は答える。
彼のグレーの瞳を見つめながら、まっすぐに。
「ううん。幻覚なんかと、違うよ」
不思議と、声は震えなかった。
だから安心して、と伝えたかったけれど、言葉にならない。
でもきっと、言葉なんていらなかったのだと思う。
……そっか、とつぶやくAの顔が、あまりにも優しげに緩んだから。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 338人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るいるい＊*(プロフ) - 遥亜さん» コメントありがとうございます！リクエストもとっても嬉しいですvV 今書いているものが完成したら是非とも書かせていただきますね！ (2019年6月12日 13時) (
レス) id: d4f8fbb131 (このIDを非表示/違反報告)
遥亜(プロフ) - 完結おめでとうございます！リクエストいいですか？是非主くんと一年A組のみんなが仲良くしているのを見てみたいです！一年A組のお手伝いとして訓練に参加したりしてもらいたいです！お願いします！ (2019年6月12日 11時) (レス) id: b6c422ed28 (このIDを非表示/違反報告)
るいるい＊*(プロフ) - 星の桜さん» コメントありがとうございます！ 尊いと思っていただけたのなら嬉しいですvV (2019年5月30日 8時) (レス) id: ba7b003d03 (このIDを非表示/違反報告)
星の桜(プロフ) - 反則...尊しをさせるきぃ...？ (2019年5月30日 6時) (レス) id: d8fdca1aee (このIDを非表示/違反報告)
るいるい＊*(プロフ) - タクさん» ありがとうございます！ 私に書ける最大級の甘々を目指しましたvV (2019年5月29日 21時) (レス) id: ffc7d791fa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：るいるい＊* | 作成日時：2019年5月23日 18時
