26:再会 ページ27
.
聞き覚えのある声だ。
少なくとも、『彼』に何度か会ったことのあるお茶子にとっては。
音もなく階段を上がってきたのは、青年。
聞こえるはずの足音さえしなかった。
淡い色でつくられている精緻な美貌。
けれど、どこか怪しさを感じる楽しげな表情。
――そこにいたのは、Aだった。
生徒たちが彼を警戒し、戦闘態勢をとれば、それを冷やかすようにヒュウ、と口笛を吹き。
お茶子と目が合えば、妖しげな美貌をふわりと緩めてみせ。
赤い唇が動く。
Aは口の形だけで、お茶子に言った。
――ね？ 終わりじゃなかっただろ？
すぅ、と背筋が冷えるのを感じる。
Aは知っていたのだ。
昨日の侵入者騒動も。このUSJ襲撃も。
……だって、Aもこれに参加する
いちばん考えたくなかった想定。
お茶子が否定し続けた予感。
だがそれは真実で、形をもって現れる。
「戻ってきたのは貴方ひとりですか、無銘A」
「ああ、俺だけだよ。尻尾の子、結構強くて。
おかげで他のも巻き込むことになっちゃったけど……ま、許してね」
尻尾の子……きっと、尾白のことだ。
どこかのエリアに飛ばされた尾白は、Aと交戦したに違いない。
そしておそらく……敗北した。
……だとすると、尾白はどうなったのだろう。
Aの個性は『人間フェロモン』。
相澤に聞いた限りだと、他人に物理的なダメージを与えることは難しいはず。
フェロモンで放心状態にされ放置されているのか。
それともフェロモンを受けた後に痛めつけられ、気絶させられてしまったのか、あるいは――…
地味だけど優しいクラスメイトの安否を思えば、胸が張り裂けてしまいそうだ。
お茶子はぐっと歯を食いしばる。
滲む視界で名前を捉え、睨みつける。
その涙は怖さか、悔しさか、怒りか。
……それとも、悲しみに近い感情からだったのか。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 560人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るいるい＊*(プロフ) - カイさん» コメントありがとうございます！ 嬉しいですvV (2019年5月29日 21時) (
レス) id: ffc7d791fa (このIDを非表示/違反報告)
カイ - お茶子も主人公も両方可愛い！ (2019年5月29日 20時) (レス) id: 2843dfb22b (このIDを非表示/違反報告)
るいるい＊*(プロフ) - 猫好きさん» 健全な占ツクでその話題はいけない…(戒め) (2019年5月24日 8時) (レス) id: d4f8fbb131 (このIDを非表示/違反報告)
猫好き - 野獣せんぱ……すみません (2019年5月24日 0時) (レス) id: fdca804d9b (このIDを非表示/違反報告)
るいるい＊*(プロフ) - 祟璃さん» うわぁあ人名のミスとかいちばんやっちゃいけない誤字！ ありがとうございます！本当に助かります！ 修正致しました！ (2019年5月20日 10時) (レス) id: d4f8fbb131 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：るいるい＊* | 作成日時：2019年5月12日 14時
